第98回箱根駅伝(2022)BACK NUMBER

1位は千葉、2位は兵庫……「山の神」の福島は?〈箱根駅伝〉が関東大会なのに全国的な人気になった理由

posted2021/11/30 11:00

 
1位は千葉、2位は兵庫……「山の神」の福島は?〈箱根駅伝〉が関東大会なのに全国的な人気になった理由<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

前回大会の青学大。兵庫県出身・岩見秀哉(右)から、千葉県出身・飯田貴之にたすきが渡された

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出口庸介

出口庸介Yosuke Deguchi

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Nanae Suzuki

 高校生の長距離選手に次の目標を聞くと、判で押したように「箱根駅伝です」という。

 有力選手の90%以上が関東の大学に進学するという現象は、他の種目では、まず見られない。今夏の東京五輪の陸上競技長距離の日本代表選手の全員が箱根駅伝経験者というのも、自然な帰結と言えるだろう。

 本大会にエントリーされる選手の出身高校の所在地は長らく兵庫がトップだったが、至近3年間は千葉が多く輩出している。

 第88回大会からの10年間で、出身高校所在地の上位20都道府県は以下のようになっている。

1位・千葉(241人)
2位・兵庫(206人)
3位・静岡(176人)
4位・埼玉(175人)
5位・愛知(164人)
6位・栃木(128人)
7位・熊本(127人)
8位・神奈川(117人)
9位・福岡(100人)
10位・福島(99人)

10位・東京(99人)
12位・宮城(95人)
12位・長野(95人)
14位・群馬(92人)
15位・広島(80人)
16位・京都(75人)
16位・長崎(75人)
18位・鹿児島(74人)
19位・岡山(70人)
20位・茨城(66人)

 もっとも少ないのは沖縄(6人)だが、47都道府県すべてが含まれている。

関東の大会が、全国的な人気の広がりを見せる理由

 箱根駅伝がより身近な存在の関東圏以外では、1920年アントワープ五輪、1924年パリ五輪マラソン代表の三浦弥平(早大)を祖とする福島が目を引く。円谷幸吉は箱根駅伝と縁がなかった(高校卒業後に自衛隊入隊、夜間部に通っていた中大で出場するという噂もあった)ものの、近年は今井正人(順大)、柏原竜二、相澤晃(ともに東洋大学)が大きな存在感を見せている。

 また、「日本マラソンの父」と呼ばれる金栗四三(東京高師、現・筑波大学)を生んだ熊本は、人口が47都道府県中23位前後だが、過去10年では7位と、先達の偉業が伝聞され静かに脈打っている印象を受ける。

 高校生の箱根駅伝への願望は、華やかな舞台で自己表現を試みようとしているからに他ならない。関東の大会であるはずの箱根駅伝が、なぜ全国的な人気の広がりを見せているのか。それは、日本テレビの全国放送に起因するところが大きい。

 コロナ禍により、前回の箱根駅伝は「応援したいから、応援にいかない。」というコピーがついた。日本テレビ系の全国ネットで放映された同大会の平均視聴率は往路31.0%、復路33.7%(ビデオリサーチ、関東地区、以下同)というものだった。各テレビ局では視聴率が10%を超えると「御の字」と言われるが、まさに箱根駅伝は「お化け番組」的な存在となっている。

 この数字はコロナ禍という特殊な状況下だからではない。前々回も往路27.5%、復路28.6%だから、そう大きな差はない。まさに国民的な人気である。コロナ禍の前は例年、東京から箱根までの沿道を約120万人前後が埋め尽くしていた。

 

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