ただ、これだけ大舞台を踏むと、当然府内では追いかけられる立場になる。今秋の府大会は実に苦しい試合が多く、相手に何度も食らいつかれる場面ばかりだった。

「この秋の自分はあまり点を取られず、思うようなピッチングができたのは良かったです。ただ、京都大会の準決勝、決勝はしんどくて、特に決勝の塔南戦ではスライダーを張られて打たれました。インコースのストレートも狙われていましたし、一番大事な場面で狙って打たれたことで、投球の幅が狭くなってしまいました。研究されているんだと思いました」

　反省の弁を口にするも、こう続けた。

「昨秋からマウンドに立たせてもらって、今年は1歳上の良いバッターともたくさん対戦しました。センバツや夏の甲子園を経験させてもらったお陰で、ピッチングだけでなくバッティングでも考えながらバットを振れるようになりました」

　近畿大会の準々決勝で和歌山東に敗れはしたが、9回裏に1点差に迫る打った瞬間それと分かる右越えのソロアーチを放った。中学時代は不動の4番だったことが分かるきれいなスイング。

「ランナーを溜めても点が入る雰囲気ではなかったので、フルスイングしました」

プレッシャーがかかる試合状況でも、しっかりとボールを捉えられるバッティングセンスも光る　©︎Sankei Shimbun

　“自分はこのままでは終わらない”と言っているかのようなひと振りは、何か森下の大きな可能性を暗示しているようにも見えた。

「来年、自分はもっと研究されると思います。でも、研究されて打たれるようでは将来プロには行けない。相手が思っている以上の投球術で抑えられるようになりたいです」

【次ページ】　「いずれは150キロのストレートを」