藤田俊哉の日欧蹴球比較論BACK NUMBER
「《川島永嗣 40歳まで契約延長》はもっと高く評価されるべき」藤田俊哉が“元同僚”のフランスでの奮闘と人柄を絶賛するワケ
text by
藤田俊哉Toshiya Fujita
photograph byJFA/AFLO
posted2021/10/19 11:01
日本代表10月シリーズでも招集された川島永嗣。GKとしての経験値は日本サッカーにとって類稀なものだ
ピッチの外では穏やかで、食事や会話が大好きな、いわゆる好青年である。しかしピッチでは一変し、勝利を目指し強烈なエネルギーを放つ選手。そのため、時にはほかの選手との衝突もあったが、怖がらず自分の考えを強く伝えることができる選手でもあった。
彼との最初のトレーニングで、こんな選手がきっと日本代表になるんだろうな! と直感した。懐かしい思い出のひとつでもある。なかなかそんな選手に出会うことはないからだ。
3年前の加入時の立場は「第3GK」だった
振り返れば3年前、ストラスブール加入時の川島永嗣は「第3GK」という立場だった。本当に厳しい状況からの挑戦を覚悟してのスタートである。そんな場所からでも、彼のフットボールへの情熱と努力で見事にスタメンの座を勝ち取った。
川崎フロンターレからリールセ(ベルギー)に移籍した時も、順調にプレーしていたように思えたが、さらなるレベルアップを目指しリスクを承知で新天地を求めたこともあった。
川島永嗣の向上心は、常に新たな挑戦に向かって走り続けている。
それがゆえに、所属先クラブが決まらないという事態に陥り、半年間を過ごすという信じ難い経験もした。それは私には想像すらできないほどの不安や孤独との戦いであったはずである。にも関わらず、欧州でのプレーを望み、その後も辛抱強くオファーを待ち続け、無所属ながらも日本代表を目指してプレーし続けた。
もちろん、周りからの様々なアドバイスもあっただろう。それでも彼は自分の意思を貫き、海外生活を続けながら辛抱強くエージェントからの連絡を待った。
忍耐力があり、優しい男が語る「GK論」の数々
彼のもとを訪ねる機会があるたびに、いつも忍耐力がある男であり、優しい男であると感じる。どんなに厳しい状況でもいつも穏やかに迎えてくれるからだ。
リエージュ、メス、ストラスブールで過ごした時間は、本当に良い思い出になっている。
いつもはホテルを予約し彼を訪ねて行くが、メスでは試合後にゆっくり話せる方がいいからと自宅に招いてくれ、泊めてもらったこともあった。
彼から聞けるGK論、日本とヨーロッパにおけるプレーの考え方の違いなどは特に新鮮で勉強になった。『常に前に飛び出すことのできる態勢を保ちアグレッシブにプレー』『強いパスを心がけることの重要性』『シュートブロックに入るときには静態することを心がける。そこから前に出る。決して重心を後ろにしない、前で勝負すること』、その他にも『選手との関係性』など様々なテーマを話し合った。