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稲垣啓太も「潜在能力は高い」と認めるワーナー・ディアンズ(19歳・NZ出身)が日本で目指す“世界一のロック”《特技は書道?》
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byJRFU
posted2021/10/07 11:00
“若手育成枠”ではあるが、日本代表合宿に招集されたワーナー・ディアンズ。ジェイミー・ジョセフHCも「見てみたい選手の1人」と期待を寄せる19歳だ
同じ日のPR稲垣啓太のオンラインインタビューでもワーナーの印象を聞いた。理路整然としたコメントで「プロフェッサー」と異名を取る笑わない男は答えた。
「今日は一緒にスクラムも組みました。日本代表のスクラムシステムは初めてだったはずだけど、ちゃんと組めていた。まだまだ高めていかないといけない部分はあるけれど、潜在能力は高いと思いますね」
これも同じ日、府中市の東芝グラウンドでは、来年1月のリーグワン開幕に向けたプレシーズンマッチ、東芝ブレイブルーパス東京vs.静岡ブルーレヴズの試合が行われた。試合後、ルーパスの主将を務めたFL藤田貴大、そして“同期”として天理大から入団した1年目SO松永拓朗にもワーナーの印象を聞いた。
「春の段階では、高校から入ってきたばかりだな、という印象だったけど、今は体もできて、筋力もついた。チームではフルコンタクトの練習も始めていましたが、身のこなしもうまくて、なかなかタックルに入れなかった(笑)」(藤田)
「最初の頃は静かで、人見知りなのかな……という印象でした。でも、あんなに背が高いのにラグビーをやるとすごく器用で、低い姿勢で相手のタックルをずらしたりするのも上手い。一緒に試合をするのが楽しみです」(松永)
バスケットボール仕込みの「うまさ」
誰もが口を揃えるのが、ワーナーの「うまさ」だ。それを生んだのは、流経大柏高で、そしてコロナ自粛期間中は父グラントさんとマンツーマンで、地道に重ねたトレーニングによって手に入れた「低い姿勢を取る体幹の強さ」だ。
そしてもうひとつのファクターは、NZ時代のバスケットボール経験だろう。バスケットボールで養われるハンドリング能力、スペースとスピードを掌握する感覚はラグビーに、特に(ラグビーを始めるとハンドリング練習の機会が減りがちな)FWの選手にはアドバンテージを与える。事実、ハンドリング、スペース感覚を持つHO堀江翔太、PR畠山健介という日本FW第一列のレジェンド2人は、ともに中学までバスケットボールをプレーしていた。
魅力は生まれ持った大きな体だけではない。
14歳で異国に移住し、異文化の中で過ごして手に入れた適応力。体の大きな自分に向かってくる相手と戦う中で身につけたボディバランス、父がトレーニングコーチという最高の環境で鍛えた体幹の強さ。自ら成長できる環境を選択する覚悟。英語と日本語の両方を完璧に話すコミュニケーション力と、異文化を自分のものにする力(ちなみに流経大柏高時代は書道で「書の甲子園」と呼ばれる国際高校生選抜書展で「秀作賞」を受賞した)。
まだ柔らかい、スポンジのような吸収力と、どんな形にも変化しうる適応力。そして、いまだ縦にも横にも成長中の肉体。間違いなく、日本ラグビーの未来を担う、おそらくは世界ラグビーにも足跡を残すだろう、底知れない大器。
その成長物語を、僕らはこれから同時代人として共有できるのだ。
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