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ダウン症の女子大生ゴルファーが憧れの選手と夢のラウンド…「やればできる」ポジティブな姿勢が生んだ“優しさの連鎖”とは?
text by
南しずかShizuka Minami
photograph byBockerstette family
posted2021/10/01 17:01
奨学金を得て大学でプレーを続けるエイミー・ボッカーステッド。家族や周囲のサポートに感謝しながら大好きなゴルフを楽しんでいる
サポートを受けるエイミー自身も日々の努力を怠らなかった。
技術だけでなく、メンタル面も大きく向上。難しいショットを打つ前には「やればできる!」と声を出すことを習慣にしたが、これは高校生の頃に参加した米女子ゴルフ協会主催のリーダーシップアカデミーで「前向きな言葉は、自信につながる」と教わったことがきっかけ。以来、エイミーは必ず自分自身にポジティブな言葉を投げ続けている。そんな努力のかいもあって、徐々に体力もついた高校2年時に初めて18ホールを完遂することができた。
ここまで到達することに、こちらの想像を絶する苦労もあったはずだが、当の本人はそんなことを微塵も感じさせない。22歳となったいまも、「ゴルフ、大好きです!」と愛くるしい笑顔を見せてくれる。
「(ゴルフを通して)新しい人々に会うことが好きだし、(高校でも大学でも)チームメートのことが好き。新しいコースでプレーするのも好きです」
憧れのウッドランドとプレー、SNSでも話題に
冒頭で紹介した「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」では、知的発達障害者を支援する企画の一環として、練習ラウンドに出場選手と一緒にプレーするイベントが催されていた。そこにエイミーも招待されたということだ。
そこでは嬉しい出来事もあった。以前から大ファンであったというゲーリー・ウッドランド(米国)とプレーする機会を得た。プレーの合間にはウッドランドと会話し、ハグも交わすなど、夢のような時間を楽しんだ。時にギャラリーに笑顔で手を振る余裕も見せていたのが印象的だった。
そんな微笑ましい一部始終を米ツアーがSNSに公開すると、瞬く間に話題になった。
「素晴らしい!」
「何度見ても、見飽きない」
「嬉し涙が出たよ。エイミー最高!」
コメント欄にポジティブな言葉がズラッと並び、動画の総数再生回数は5100万回を超えた。
エイミーとの出会いはウッドランドにも影響を及ぼした。初対面から約4カ月後、なんと全米オープンで優勝を達成したのである。ツアー通算4勝目、自身初のメジャー制覇だった。試合後には「エイミーさんのように『自分は出来るんだ!』と試合中に何度も心の中で言い聞かせたよ」と語り、会見場からビデオ通話を使ってエイミーへ優勝報告。ウッドランドとボッカーステット家の交流は今も続いている。