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ダウン症の女子大生ゴルファーが憧れの選手と夢のラウンド…「やればできる」ポジティブな姿勢が生んだ“優しさの連鎖”とは?
text by
南しずかShizuka Minami
photograph byBockerstette family
posted2021/10/01 17:01
奨学金を得て大学でプレーを続けるエイミー・ボッカーステッド。家族や周囲のサポートに感謝しながら大好きなゴルフを楽しんでいる
症状や程度は人それぞれだが、ダウン症の大きな特徴の1つとして「ゆっくり発達する」ことが挙げられている。特に言語の発達には遅れがあり、幼少期に自分の意思をうまく言葉で表せないこともあるという。
ジョーは当時を振り返る。
「娘がゴルフをすごく好きだったのかと訊かれると分かりません。父親の勘で、ゴルフが娘の人生を豊かにするんじゃないかと感じたんです」
もともとエイミーは好奇心旺盛な性格で、“Let’s enjoy派”。ピアノ、水泳、サッカー、バレーボールなど、機会があればいろんなアクティビティにトライし、そのどれもを思いっきり楽しんでいた。だから、ゴルフレッスンも嫌がることはなかった。
当初は「家族みんなで(ゴルフを)楽しめるレベルまで上達すれば」という軽い気持ちだったが、ある1人のコーチが「高校生レベルでプレーできると思います」とそのゴルフの才能に太鼓判を押した。それを契機に本格的なコーチのもとで定期的にレッスンを受けるようになった。
5ホール回るのがやっと
高校に進学したエイミーは迷わずにゴルフ部に入部。そこでも才能をすぐに認められたが、試合に出場することは叶わなかった。まだ1ラウンド18ホールを回るほどの体力を有していなかったからだ。
ダウン症のある人は、一般的に筋力が弱いとも言われている。歩くことも競技の一部と言われるゴルフは、エイミーにとってはハードルが高かった。同学年のチームメートが18ホール練習する間に、5ホール回るのがやっと。さらに居住するアリゾナ州は砂漠地帯のため、夏は40度超えの日だって珍しくない。
そこで両親はエイミーをサポートすべく、出場する試合にはいつも同行し、飲み物や食べ物の差し入れを欠かさなかったという。
ジョーに至ってはキャディ役も買ってでた。ただし、学生の試合でキャディができることは、クラブ選択と打つ方向などのアドバイスのみ。キャディバッグを担いだり、手引きカートを動かすのは選手自身でしなければならない。エイミーの体力を考え、疲れたらすぐ座れるよう、手引きカートに折りたたみ式のイスを装着するなど、できる限りのサポートを行った。