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ダウン症の女子大生ゴルファーが憧れの選手と夢のラウンド…「やればできる」ポジティブな姿勢が生んだ“優しさの連鎖”とは?
posted2021/10/01 17:01
text by
南しずかShizuka Minami
photograph by
Bockerstette family
2019年1月末、米国アリゾナ州。
米男子ゴルフツアー「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」の練習ラウンド。世界トップの男子プロたちの中にいて、大きな喝采を浴びたのは1人の女子大学生ゴルファーだった。
16番パー3、エイミー・ボッカーステットはティーショットを勢いよく振り抜いた。ボールはグリーン傍のバンカーへ。「やればできる、やればできる」と呟きながらバンカーに足を踏み入れた。エイミーのショットは見事グリーンへオン。カップまでの距離は約3mあったが、再び「やればできる」と呟くと、ボールを丁寧にカップへ沈めた。会場となったTPCスコッツデールに、ギャラリーの大きな歓声と拍手が鳴り響いた。
ゴルフとの出会いは中学1年生
エイミーは米国アリゾナ州・パラダイスバレーコミュニティカレッジに通う女子大生ゴルファー。ダウン症候群(以下、ダウン症)として、大学のスポーツ奨学金を受けた初めてのケースである。
「エイミーとゴルフの出会いは中学1年生の時です」
9月上旬、エイミーと父親のジョーがオンライン取材に応じてくれた。
「学校のチャリティゴルフイベントに参加することになったのですが、娘はゴルフをしたことがなかったので、打ち方をちょっと習った方がいいだろうと近所のゴルフショップに寄ったんです」(ジョー)
ゴルフにおいて、初心者が空振りすることはよくあること。でも、エイミーは違った。初めてのスイングからしっかりとボールを捉えたのである。これに驚いたジョーは自宅に帰ると妻のジェニーにその様子を報告し、「もしかしたら才能があるかもしれない。ゴルフレッスンを受けさせてみようか」と相談した。