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阪神園芸“中の人”に直撃… 雨続きだった夏の甲子園「大変だったけど水はけがよかった」理由とは《大会期間は朝6時半出社》
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph bySatoshi Shigeno
posted2021/10/01 11:03
プロ野球、高校野球……阪神園芸のグラウンド整備はスケジュールに合わせて動いている
金沢 というのも、気温が上昇していかないと、下に残っている水も蒸発しきらないから柔らかいままなんです。太陽が当たっても、3月上旬だとまだ気温が低いですから。グラウンドが固まっていくのが3月下旬、桜が咲く頃にはある程度気温が上がってきて、いい状態になるんです。
雨続きだった夏の甲子園、どう感じてました?
甲子園での取材を終えた夜にラジオ中継を聞いていると、阪神戦の解説を務めていた桧山進次郎さんが「本当に阪神園芸さんが日々しっかりと整備してくださっていますが、《土の中から》という部分で時間がかかるそうなんですよ」といった風に話していた。金沢さんが懇切丁寧に説明してくれたグラウンド管理の丹念さについて、阪神OBだからこそ知る部分があるのだろう。
話を戻そう。雨続きで異例の大会となった、2021年夏の甲子園について聞いてみた。
――今夏の甲子園は雨で順延が続くなど、天候不順が続きました。
金沢 もちろん大変でしたね。近年の夏と言えば、まず暑さが大変ですが……。
――気候変動の話も興味深いです。
金沢 猛暑日になる日が多いのはもちろんなんですが、暑い日はなんぼでもあったと思うんです。一方で最低気温が25度以下の日がほぼなく、27、28度が続くと――グラウンドに対しては関係ないですが、自分達がしんどく感じるというのは事実です。それに加えて20分で5~10ミリの豪雨が一気に、という降り方は以前に比べて増えた印象がありますね。
――阪神園芸の方々も、非常にタフな環境で整備をされているんですね。
金沢 ただ逆に、雨の心配というのは夏の甲子園ではほぼなかったんですよ。1日順延する年は……たまたま来た低気圧や台風での中止などが、あるかないかという程度で。それが2021年は初日から台風で開会式が延期になって。始まってみたら、雨・雨・雨……正直なところ、もう1週間経ってるんやけど、と思いましたね(苦笑)。
プロ野球と違って朝から試合があるので、試合が進んでいる中での雨が降ってきてコールドゲーム、ノーゲームというケースもありました。試合が進行しているので雨が降っていてもシートも張れないので。本当にやるべきことは多かったです。ただ、本当に水はけもよかったので、そこは助かりましたね。水はけは毎年、同じ条件じゃないですから。
水はけで「1つプラスになった」出来事とは
――「阪神園芸はさすがの円滑な神整備だった」との報道や評判の舞台裏では、様々な準備をとても大切にされているわけで……先ほどのオフシーズンの話に通じるかと思うのですが、水はけってその年によって大きく変わるんですか?