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「最年少、最年少、最年少…」19歳藤井聡太三冠の記録ラッシュ それでも難易度が高い中原誠の“伝説的記録”「当時はスゴいと思わなかった」
text by
相崎修司Shuji Sagasaki
photograph byKYODO
posted2021/09/19 17:03
9月13日に叡王を獲得し、史上最年少三冠になった藤井聡太氏。写真は7月、棋聖戦で初防衛。18歳11カ月で最年少九段になった
【1】史上最年少竜王、羽生善治、19歳3カ月0日、1989年12月27日
藤井は豊島将之竜王への挑戦を決め、四冠も視野に入っているが、仮にここから竜王を最速で奪取しても今年の11月半ばが決着局となるため、その時の藤井は19歳3カ月二十数日で、わずかに届かない。藤井の竜王戦参加は今期が5期目だが、初参加からわずか3期目(前身の十段戦を含む)で竜王を奪取した、羽生の偉業をたたえるべきだろう。
【2】史上最年少名人、谷川浩司、21歳2カ月、1983年6月15日
谷川の史上最年少名人については前述したが、藤井がこの年少記録を更新する可能性は残されている。ただし現在進行中の第80期順位戦B級1組で、参加13名のうちの上位2名に入って(現在3番手)A級昇級を果たし、そのA級でも優勝して名人挑戦権を獲得し、七番勝負で時の名人を破る必要がある。現状からロスなく名人奪取に至れば、それが実現するのは2023年の5~6月となるが、どこかで一度でもチャンスを逃すと谷川の最年少記録は更新できない。
【3】史上最年少王座、羽生善治、21歳11カ月、1992年9月22日
藤井が王座を獲得するのは最速でも2022年の9~10月となるので、こちらも年少記録にはあと1期しか猶予がない。タイトル保持者として挑戦者決定トーナメントへのシード権を得られるのは大きいが、今年はその挑戦者決定トーナメントの初戦で深浦康市九段に敗れている。
羽生の王座戦は年少記録もさることながら、初獲得から19連覇したということが特筆すべき大記録だ。同一タイトルの連覇記録としては他の追随を許さない(2位は名人戦における大山康晴の13連覇)。
【4】史上最年少棋王、羽生善治、20歳5カ月、1991年3月18日
藤井は今期の棋王戦で斎藤慎太郎八段に敗れたため、棋王の奪取は最速でも2022年の2~3月となる。これは竜王戦と同様、羽生の最年少記録の更新には至らない。
なお、羽生は棋王も初獲得から12連覇している。その途上ではタイトル戦16連勝、先手番に限ると25連勝というとんでもない数字が残っている。
【5】史上最年少王将、中村修、23歳4カ月、1986年3月14日
年少記録の更新という意味ではこの王将戦が最も猶予があることになる(3期後までに奪取すればよい)が、挑戦権を得るまでが大変だ。羽生善治九段ですら24歳になるまで挑戦権を得られなかったといえば、その大変さがわかると言えるか。
中村が王将を獲得した時の相手は、時の最強者である中原誠十六世名人。戦前の予想では圧倒的に中原防衛という声が高かったそうだが、ふたを開けてみると中村の3連勝スタートで、結果は4勝2敗で王将を奪取した。その翌年も中原のリターンマッチを受けて、やはり4勝2敗で防衛している。
王将戦で挑戦権を得る大変さは、なんといっても挑戦者決定リーグの過酷さだろう。7人リーグを2~3ヵ月で戦うという過密スケジュール。さらには、順位戦A級をも上回っているのではと言われる、リーグ参加者の充実ぶりだ。昨年の藤井は二冠を奪取した直後で勢いに乗っての参加だったが、なんと3勝3敗の指し分けに終わって、挑戦どころかリーグ陥落を余儀なくされた。しかし陥落にもめげず、今期は再びリーグ入りを果たし、挑戦そして奪取を目指す。
最年少四冠~最年少七冠の記録は? 六冠以降は羽生のみ
藤井は昨年の棋聖・王位の相次ぐ奪取で18歳1カ月で二冠を達成、そして先日の叡王奪取で、19歳1カ月で三冠達成となった。いずれも羽生善治九段の21歳11カ月、22歳3カ月を更新する年少記録である。