将棋PRESSBACK NUMBER
「最年少、最年少、最年少…」19歳藤井聡太三冠の記録ラッシュ それでも難易度が高い中原誠の“伝説的記録”「当時はスゴいと思わなかった」
text by
相崎修司Shuji Sagasaki
photograph byKYODO
posted2021/09/19 17:03
9月13日に叡王を獲得し、史上最年少三冠になった藤井聡太氏。写真は7月、棋聖戦で初防衛。18歳11カ月で最年少九段になった
・史上最年少永世称号、中原誠、23歳11カ月、1971年8月3日(永世棋聖)
永世称号の獲得条件は棋戦によって異なるが、獲得5期というのが一つの目安である。中原は23歳11カ月で通算5期目の棋聖を獲得し、永世棋聖の資格を得たが、藤井が現在2連覇中の棋聖と王位、そのいずれかで5連覇を達成すれば大名人の持つ記録を更新することになる。
また年少記録ではないが、中原の持つ記録で藤井に更新の期待がかかるのは年間最高勝率(67年度、47勝8敗、0.855)だ。藤井は当時の中原と比較しても通算勝率でだいぶ上回っているが、それでも年間最高勝率だけは更新できていない。
筆者は2012年に専門誌で当時の将棋界の記録について書いた。羽生が大山の通算タイトル80期を更新する直前の頃だ。そして藤井が奨励会に入る数カ月前である。
その時に中原は最高勝率について「当時はたいして凄いと思っていなかったし、いつかは破られると思っていた。まさか45年も破られないとは……」、最年少永世称号には「当時は棋聖戦が年2回だったからね。勝率はともかく、この記録は破られないんじゃないかな」と、それぞれ語っている。
特に勝率については、これからタイトル戦が増えることで、より対戦相手の厳しさも増す。必然的に高勝率を達成するのは難しくなると考えるべきなのだが、そのような状況で中原の記録に迫ったのが、七冠を達成した時の羽生(95年度、46勝9敗、0.836)である。この時の羽生のタイトル戦番勝負における数字は25勝5敗と圧巻だ。
藤井がこのような大記録を更新するか、まずは戦いを見守りたい。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。