「人が入っていたらどんな感じなのかなと思いました。自分に集中していたのであまり周りを見る余裕はなかったですが、あそこに立てたのは感動でした」

　このとき、津端は目標を見出した。

「出場した選手の方々と接する機会はありませんでしたが、身近に感じられました。選手として、出たいと思いました。パリを目指そうと思いました」

　大会に出場した2人、フェザー級の入江聖奈は金メダル、フライ級の並木月海は銅メダルを獲得した。

「配信で2人の試合はしっかり観させてもらいました。お祝いの言葉をおくると返してくれて」

2019年の日本代表決定戦にて。一番右が津端。メダリストの入江聖奈（右から4人目）、並木月海（5人目）の姿も　©AFLO

医療従事者、そしてアスリートとして

　うれしそうな笑顔に変わった津端は現在のスタンスをこう語る。

「医療の現場を見てきて、少しでも携われたら、という思いで看護師を続けさせてもらっています。ただ、ボクシングの方が前に出ている、そんな感覚です」

　看護師もボクシングも、思いもかけない形でその世界に飛び込み、魅力を発見して今日まで来た。自ら探し求めた場所ではなくても、それぞれの場所で支援を受け、支えられつつ足場を築くことができたのは、そこに注ぐ真剣さあればこそだったのではないか。

「ボクシングの魅力は、バスケットボールみたいにボールを持っている側がオフェンス、持っていない側がディフェンスと分かれるのとは違って常に入れ替わる緊張感がある中での駆け引き。見ていても楽しいと思います。女性がボクシングをするなんて、というイメージを持っている方も多いと思いますが、今回のオリンピックで変わるんだったらいいなと思います」

　思いもよらなかったオリンピックという夢を、出会ったボクシングを通して追い続ける。