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〈J1とプレミアリーグを比較してみた〉降格回避どころか上位も視野… アビスパとブレントフォードに見る“好調な昇格組の共通点”とは
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph byGetty Images
posted2021/09/09 17:00
アビスパ福岡とブレントフォード。J1とプレミア昇格組というくらいの共通点と思いきや、調べてみると興味深いデータは数多く…
4月から導入した3バックシステムで後方に安定感が戻ると、今夏のCBクリストファー・アイェルの加入でより堅固なものへと進化した。
ハードワークにも含まれるが、彼らの躍進のもうひとつの秘訣はトランジションの速さである。先述の通りネガティブトランジションへの高い意識がみられる一方で、守から攻への切り替えも非常に速い印象だ。
福岡の平均ポゼッション率42.9%は今季のJ1全20クラブの中で最も低い数字だ。ポゼッションではなく、ボール奪取からフィニッシュに至るまでのスピードを重視するのが彼らのスタイルである。
ショートカウンターのためには「働き蜂」の存在が必須
一方のブレントフォードは後方からボールを繋ぐパターンを持ち合わせているが、ハイプレスのスイッチを入れたときは最短距離でゴールに向かうチームに変貌する。格上との対戦が多くなるにつれ自由にボールを持つことはできなくなるだけに、ショートカウンターができることは大きな強みになる。
ショートカウンターをするには「働き蜂」の存在が欠かせない。中盤でのボール回収能力が高い前寛之とクリスティアン・ノアゴーアだ。無尽蔵のスタミナで広範囲をカバーする前、対人守備の強さで中盤に防波堤を築くノアゴーアがいなければ、ショートカウンターはほぼ発動できないといっていい。
加えてフアンマ・デルガド、アイバン・トニーというポストプレーに長けた存在がいることで、大胆なロングカウンターも敢行できる。攻め手が作れない状況でも前線に収めどころがあることで、思い切ったラインコントロールが可能になっている。特に得点力も兼ね備える後者は、チームにとって紛れもないキーマンだ。
上位陣に割って入るための“追加条件”は?
プレミアリーグ、J1いずれも、昇格組のクラブがアグレッシブに戦う姿には好感が持てるものだが、今季はブレントフォードと福岡がそれを体現している。
さて、いよいよリーグ戦も最終局面を迎える福岡は、徳島戦の勝利で最低ノルマである残留をほぼ手中に収めた。ここからはどこまで上位陣に割って入れるか、という戦いになる。