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「負けたら生きていけるのか…」“禁断の愛”との批判を超えて…レスリング向田真優24歳とコーチ志土地翔大34歳が明かした覚悟《金メダル後に結婚》
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布施鋼治Koji Fuse
photograph byGetty Images
posted2021/09/08 17:00
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東京オリンピック女子53kg級決勝でタックルに入る向田真優
翌年には五輪階級の53kg級に落とし、世界選手権2連覇を狙った。果たして向田は難なく勝ち上がり、決勝でも残り時間10秒まで6-4とリードしていた。この一戦を筆者は現場で見ていたが、「このまま向田が逃げ切るだろう」と楽観視していた。
しかし、試合終了間際、対戦相手に浴びせ倒しのように倒されると、スコアは6-8と逆転。土壇場で勝負を引っくり返された向田は呆然とした面持ちのまま、キャンバスで体育座りを続けるしかなかった。勝負は最後まで何があるかわからないということを如実に現した一戦だった。
翌年、向田は世界王者に返り咲くが、2019年の世界選手権では決勝で北朝鮮代表に第2ピリオドになってから逆転負け。2020年アジア選手権決勝ではローリングを仕掛けている最中に相手に向きを変えられ逆転フォール負けを喫してしまった。
向田の金メダルを信じて疑わなかった人物
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「ここ一番というところで弱い」
向田には、いつしかそんなレッテルが貼られるようになってしまった。国際舞台では安定した結果を残していなかっただけに、そう思われても仕方あるまい。正直、今回の東京オリンピックも向田に関していえば、「メダルを獲ってくれさえすれば……」という声すらあったことは否定できない。
その一方で向田とともに「東京で金メダル!」を信じて疑わない者もいた。二人三脚で調整に励んでいた志土地コーチだ。昨年春、向田とともに愛知県を離れて上京。向田の専属コーチという形で活動することになった日体大レスリング部出身で、プロのMMAファイターとして活動したこともある男は「逆転負けを喫しないためにはどうしたらいいか」をメインテーマに指導することを決意した。
この階級で向田のテクニックは申し分ない。だったらまんべんなく調整するより、マイナス部分を徹底して強化する方が得策だと考えたのだ。そのために志土地はまず向田の「最初の1分、あるいは1分半はメチャクチャ強い」という長所に着目した。「だったらその強さを試合終了まで継続させたらいい」
具体的にいうと?
「意識の部分を最初から最後まで変えないということです。試合中、点数も自分で計算して『いまは何点リードしているから大丈夫』という気持ちではなく、いつも0-0のつもりで攻めにいく。声かけも常に攻撃を意識してもらうように心がけました」
志土地の指導が生きた決勝でのタックル
これまでの向田は試合中に弱気になると、残り時間を気にしたり、審判にアピールすることが多かった。だが、今回そういう場面は皆無だった。白眉はパン・キアンユ(中国)との決勝だろう。第1ピリオドは0-4とリードを許したが、第2ピリオドになると反撃を開始。片足タックルからバックを奪って2点を返す。その後再び片足タックルを決め、4-4のイーブンにした。