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巨人から戦力外通告→右肩痛を克服し、期限ギリギリでDeNA支配下登録…復活の宮國椋丞、三浦監督が先発起用を明言したワケ
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2021/09/01 17:02
DeNAではこれまで育成の背番号「106」を背負っていたが、今後は「65」で本格的な復活に挑む
刻々と迫るタイムリミット。次のチャンスは8月22日、ファームのヤクルト戦だったが、宮國は5イニングを7安打3失点で終えている。そして最終テストは8月28日のファーム巨人戦。場所は高校を卒業してから10年間、練習に明け暮れたジャイアンツ球場である。思い出がつまった地で、プロ野球人生を左右する勝負へと挑んだ。
この大事な登板で今季一番のピッチングを見せた宮國。以前よりも質が向上しファールが取れるようになった140キロ半ばのストレートを軸に、130キロ台のカットボールとシュートの対になる変化球を両サイドに散らし、そして同じ球速帯で鋭く落ちる強度のあるフォークで空振りを奪う。さらに左打者のインサイド、右打者のアウトローを突くスライダーと打者のタイミングを外すスローカーブといった多彩な変化球をコントロールし、6イニングを6三振、被安打6、無失点で乗り切った。
90球、課題だったスタミナにも不安は感じられず、またかつてはサイドスローになっていた腕の振りも、すっかり全盛期の高さに戻っていた。最後の大一番でのピッチング内容が支配下登録の決め手となったのは間違いないだろう。
三浦監督はこの球団の判断を受けて、宮國の先発での起用を明言した。
「(最後の試合は)しっかりとコントロールしきっていた。以前は力のあるストレートとフォークが持ち味だったが、今は技術で投げられている。これからが勝負。しっかりと準備をして頑張ってほしい」
ボールに強さもあるオールラウンドぶりは、DeNAにあって独特な個性として貴重な戦力になるはずだ。
チームにはすっかり馴染んでおり「グニさん」「グーニー」と愛着をもって呼ばれ、仲間たちと笑顔で接している様子がDOCK(ファーム施設)ではよく見られている。同学年の選手は、チームの顔である山崎康晃と石田健大。まだ29歳、老け込む歳ではない。
「プロ11年目に入らせていただくのですが、そのなかで一番調子がいいと思っているんです」
宮國は笑顔でそう語り、自信を漂わす。シーズンの残り試合数は少ないが、連戦もありチャンスは必ずあるだろう。Bクラスにいるチーム状況を考えれば、この時期に新たに契約したということは、来季も視野に入っているということだ。かつては開幕投手を務めたものの、のちに悪夢を見た男の捲土重来。若手の多いDeNAの選手たちに、とくとその背中を見せつけてもらいたい。