“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
《神村学園2人で8ゴール》「ふざけんなよ!」親友の激怒に目が覚めて…Jスカウトも大注目の高2コンビに起きた“逆転現象”とは?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2021/08/31 11:07
エリート街道を走ってきた神村学園MF大迫塁(2年/14番)。中学からコンビを組むFW福田師王(13番)と切磋琢磨しながら成長を続けている
そんな状況に追い討ちをかけるように、福田との立場の違いを痛感させられることがあった。今年4月中旬に2人揃ってU-17日本代表候補に選出されるが、5月上旬のU-18日本代表候補メンバーから大迫だけが落選した。
「高校選抜のときとは比べ物にならないほどの悔しさが沸き上がってきたし、何かを変えようと努力をしてきたつもりだったけど、それはあくまで『つもり』であって、結局何も変わっていないことに気づいたんです」
それに気づけたのは、父親の一言だった。
ADVERTISEMENT
「『完全に師王に抜かれたな』と言われて目が覚めたというか、初めてはっきりと言われたことで『やっぱりそうなのか』と納得することができた」
福田との違いは何か?
そう自分に問いかけたとき、ゴールという目に見える結果が自分に足りないことを感じた。大迫の武器は広い視野と左足から繰り出される長短のパスを駆使したゲームメイク。だが、それだけではゴール前での怖さに繋がらない。フィニッシャーとして、よりプレッシャーのかかる役割をこなさないと成長できない。
昨年のトップ下での起用は有村圭一郎監督が大迫にその自覚を促すための策だったが、当の本人が本当の意味で気づいていなかったのかもしれない。
「いろんな意味で自分を知ることができました」
「もう一度、トップ下をやらせてください」
大迫は早速行動に出た。「もう一度、トップ下をやらせてください。僕はゴールが取りたいんです」と有村監督に直訴し、4月に開幕したプリンスリーグ九州では再びトップ下のポジションを任され、そこから常にゴールを追い求めた。
「トップ下に戻って思ったのは、師王は誰よりもシュートを打っているということ。練習でも自主トレでも常に(ゴールを)狙っている。その姿はずっと見てきたはずなのに、改めて凄いと思ったし、自分も取り入れないといけないと思ったんです。さらに師王に負けたくないと強く思うようになりました」
ここから試合での大迫のシュート本数は増えた。延長までもつれたインターハイ予選決勝では得意の左足で鮮やかなドリブルシュートを決めてチームをインターハイに導いた。そして本大会では選手権でのトラウマを見事に払拭して、3戦連続のゴール。福田へのライバル意識が明確に芽生えたことによって、成長速度を加速させた。