“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
《神村学園2人で8ゴール》「ふざけんなよ!」親友の激怒に目が覚めて…Jスカウトも大注目の高2コンビに起きた“逆転現象”とは?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2021/08/31 11:07
エリート街道を走ってきた神村学園MF大迫塁(2年/14番)。中学からコンビを組むFW福田師王(13番)と切磋琢磨しながら成長を続けている
対する福田にその関係性を問いかけると、こちらも意外な言葉が返ってきた。
「自分が塁を抜いたなんて1回も思ったことはありません」
「僕にとって塁の存在はいつまでも変わらないと思っています。塁がいたからこそ、今の僕がある」
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中学時代、福田は自分がプロを目指せるような選手だとは一切思っていなかったと振り返る。
「中2の時は特に怪我が多く、本気で上を目指すんじゃなくて、サッカーを楽しもうと思っていた。でも塁が一生懸命努力している姿を見ていたし、どんどん上のレベルにかけ上げっていく姿を見ていたら、『俺はこんな軽い気持ちでサッカーをやっていいのか』『塁がいることで、いろんな人に自分のプレーを一緒に見てもらえてチャンスが来るかもしれない』と思うようになったんです。何より僕がゴールを決めると、塁が本当に喜んでくれる。塁の笑顔をもっと見たいし、高いレベルでの意識を学んだからこそ、僕はサッカーに本気になれたんです」
「ふざけんなよ!」親友の激怒
今年2月、福田がその思いを強くした出来事があった。
選手権に敗れた後、怪我と高校選抜の活動の影響で1カ月ほどチームに合流できなかった時のことだ。
九州新人大会中に途中合流してすぐに先発出場した準決勝の国見戦で、コンディションが悪かった福田は空回りし、途中交代を告げられた。チームも0-1の敗戦を喫している。
「どんどん自分自身にイライラしてきて、周りの声が全く入ってこない状態だった」と、混乱したままベンチに下がると、福田はふてくされた態度をとってしまった
それを怒ったのは大迫だった。
「何ふてくされてんだよ! ふざけんなよ!」
親友の激怒に、福田は周りを憚らずに大号泣した。何を言われたかまでは覚えていない。でも大迫が真剣に怒ってくれたことで、もっとチームのために、冷静になってプレーしないといけないと目が覚めた。思ってみれば、いつも自分の気が緩んだり、自分を見失いそうになった時にきつく叱ってくれるのは大迫だった。
大迫は国見戦の帰りのバスで福田のそばを離れなかったという。大迫はその時のことをこう回顧する。
「怒りましたが、『自分も選手権の時にこんな思いをしたな』と思ったし、師王を1人にしたらかわいそうだと思ったので、バスでいろんな話をしました。あいつの悔しさは良くわかる。チームを勝たせようと思った上での態度だとわかっていたので」
その優しさは福田の心に染み渡った。叱咤激励してまで、自分を高めてくれる存在。だからこそ、福田にとって大迫は常に自分の前を走っている感覚なのだろう。
同時に福田は大迫の「変化」にも刺激を受けていた。
「塁は今年に入って、シュート練習をめちゃくちゃするようになった。それがゴールという結果に出ているし、僕も塁に負けないように努力をしないといけないと思います。やっぱり努力する天才というか、本当に尊敬できる存在です」