「インターハイは思っていたより楽しかったです」

　実はインターハイ直前に大迫の心を支配していたのは楽しみよりも「不安」だったという。

「去年の選手権で自分の出来に愕然としていたんです。大会前からめちゃくちゃ注目されて、（神村学園の）エースナンバーの14番で、テレビにも密着していただいたのにもかかわらず、何もできないまま終わってしまった。本当に精神的にキツくて、インターハイでもそうなってしまうんじゃないかという不安が大きくなっていたんです」

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　昨年度の選手権、大迫はゴールもアシストも「0」に終わっている。チームもベスト16に進出するも、3回戦で富山第一に0－1の敗退。1回戦で得点の起点にはなってはいたものの、大迫にとっては目に見えた結果を残せない悔いが残る大会となった。

　さらに2回戦で決勝ゴールを奪った福田との立場にも変化が生まれていた。

「（自分は）優秀選手にも、高校選抜にも当然入れなかった。それは当然の結果だと思っていたのですが、（優秀選手と高校選抜に）師王が選ばれたことで一気に悔しさがこみ上げてきたんです。でも……その時はただ悔しいだけだったんです」

大迫は1年生ながらエース番号「14」を背負ったが、自身が満足するプレーを見せられなかった　©︎KYODO

「何かを変えないといけない」

　大迫はこれまでエリート街道を歩んできた。中2時にU-14エリートプログラムに、中3時にはU-15日本代表に選出。昨シーズンもU-16日本代表の主軸として活躍し、常に世代を代表する選手だった。福田は大迫に一歩遅れをとりながらも中3の2月にU-17日本代表候補に初選出。ここから年代別代表に入るときはいつも2人一緒だった。

　しかし、選手権後の優秀選手の選出、高校選抜の招集において初めて「逆転現象」が起こったのだ。

　その事実に大迫の心は揺れた。「何かを変えないといけない」と思った大迫は、高1の1年間に任されたトップ下ではなく、慣れ親しんだボランチとして成長をしていくことを誓った。

　本来のポジションに戻ったことで、自分の感覚を磨けている手応えはあった。しかし、心の突っ掛かりは晴れなかった。

「周りからは『うまい』『技術がある』と評価してもらっているのに、高校入ったくらいからずっと『俺ってそんなに凄いのか？』『何が凄いんだろう』と常にモヤモヤしていたんです。これは謙虚とかではなく、純粋にそう思っていて、それが選手権をきっかけにどんどん顔を出してきたんです」

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