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“世界一”を知る元なでしこ近賀ゆかり(37)が語る『WEリーグ』の使命「結果が必要だと戦っていた澤さん世代を見ているからこそ」
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT
posted2021/08/30 11:01
サンフレッチェ広島レジーナの主将として新リーグに臨む近賀ゆかり(写真は5月のプレシーズンマッチ)
――世界が日本に追いついてきたのか、それとも日本の成長が止まっているのか。
今回の代表チームを見てもらえばわかると思いますが、私たちが戦っていた10年前と比較しても、技術レベルは絶対に上がっているんです。でも「世界で戦う」という技術だけでは勝てないところを今大会は世界に見せつけられたなと。
私がなでしこでプレーしていた頃は海外でプレーする選手が多く、彼女たちは世界と戦っても“慣れている”というか、その差はすごく感じていました。国内でプレーしていた私たちにとって、海外の選手たちの速さやリーチの長さ、パワーに慣れるまでに少し時間がかかる。そこを海外組は当たり前にプレーしていました。技術の高さというよりは、サッカーの巧さ、というんですかね。技術にプラスアルファの部分、世界と戦う上で必要な細かい判断力が備わっている選手が多くいたら、今大会も違う結果になったかもしれない。
――田中美南選手も、世界に勝つためにもう1つの武器を身につけなければいけないと言っていました。
本当にそうだと思います。だから私は個人的にWEリーグにもっと多くの外国人選手が来ることを望んでいます。私も海外でプレーしましたが、国内でもそういうスピード、パワーの違いをシーズン通して味わえる環境であってほしい。力のある外国人選手は一発で試合を決めてしまうし、技術がなくてもスピードがあったらゴールまで行けちゃう、それも含めてサッカー、ということを知ることも選手にとってはすごく大事。WEリーグのレベルアップ、盛り上がりを代表の強化にもつなげていかなければ、とは思います。
近賀が語る「恐怖心」とは?
――そういう意味で、世界一を経験し、海外でのプレー経験もある近賀選手のような存在はWEリーグにとっても大きいと思います。黄金期のメンバーともそれぞれのチームで戦うことになりますが、改めてご自身はどういう存在でいるべきだと思っていますか。
良い時代を知ってしまっただけに、結果が出なければ元に戻ってしまうという「恐怖心」はあります。女子サッカーをメジャースポーツにするために結果が必要だと戦っていた澤(穂希)さん世代を見ているので、いかに結果が大事かという部分は理解しています。でも、今一緒に戦っているメンバーは(肌で感じていない分)わからないと思うんです。私も同じ世代だったら本当の意味で絶対わからないし、勝てなかったらどうなっちゃうのかなんてたぶん想像もついていないと思います。
過度に「恐怖心」を煽る必要はないと思うんですけど、それでも結果にこだわらなきゃいけない、結果を出してWEリーグを盛り上げるんだ、ということはしっかり伝えていかないといけない。あとは世界との差、だったり。もっともっとWEリーグが良くなるような働きかけは求められていると感じています。