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“世界一”を知る元なでしこ近賀ゆかり(37)が語る『WEリーグ』の使命「結果が必要だと戦っていた澤さん世代を見ているからこそ」
posted2021/08/30 11:01
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Naoki Morita/AFLO SPORT
――昨年の6月の新リーグ発表から少し時間が経ちました。今はどんな心境でしょうか。
最初に新リーグが始まると聞いたときは「やっと来た」という嬉しさがあって、ワクワクする気持ちが大きかったですね。開幕を控えた今もその気持ちは変わらないですけど、(開幕が)近づくにつれて、しっかり女子サッカーを盛り上げなくてはいけないという使命感、責任感は高まっていると思います。
――「やっと来た」とは?
2011年にW杯を優勝することができて、一時的に女子サッカーが注目される時期がありました。当時は目の前のことに夢中だったのであまり感じませんでしたが、今思うとあの頃に(新リーグが)始まっていたら良かったなという思いはありますね。今回の東京五輪も顕著でしたが、この10年、ここ数年で世界各国の強化が進み、特にヨーロッパはリーグ自体もどんどん大きくなってきています。そういう中で日本もより魅力的なリーグになるためには「プロのリーグ」にならないとなかなか目を向けてもらえないのかなと思っていました。
コロナ禍の難しいタイミングにもかかわらず新しいスタートを切れるのはすごくありがたいことなので、その分の責任も大きいですね。
――「あの頃」という言葉が出ましたが、世界一になったメンバーの皆さんとは、WEリーグについて話をしましたか?
そんなに多く話す場があったわけではないですが、「盛り上げなきゃいけない」という意識はそれぞれ持っていると思います。新チームの大宮(アルディージャVENTUS)に移籍した鮫島(彩)や阪口(夢穂)あたりは、そういう気持ちはより強いと思いますし、アメリカでプレーする川澄(奈穂美)もWEリーグを盛り上げるために現地での経験を話してくれます。より良いリーグに、という意識はみんな強く持っていると思いますね。
――まだ開幕前ですが「プロリーグ」として何が変わるのか、何を変えないといけないと思いますか?
各個人、チームの向上心というのはプロになろうが、アマチュアだろうが、おそらく変わらないと思います。ただリーグに対して選手もチームも“興行”という部分をより意識しなければとは思います。そういう意味でも、チームとしては何より「結果」が求められると思う。全員がより強く意識する必要があると感じています。
――メダルが期待された東京オリンピックで、なでしこジャパンはベスト8で敗退。望んだ結果を得られなかったからこそ、このタイミングでの新リーグが発足することは、意義があるのかなと思います。
そうですね。オリンピックという大きな大会で結果を出すことはとても難しいこと。ましてや自国開催ですから、私たちの想像を超える難しさがあったと思います。ただ、日本代表の選手たちもそうですけど、女子サッカーに関わるすべての人たちは今回の結果から学ばなきゃいけないところは多いと思います。
先程も言いましたが、間違いなく私たちが戦ってきた当時より世界各国の技術の高さ、組織的な戦い方のレベルは遥かに上がっています。全体的にミスが減り、逆にこちらがミスすればそこをすかさず突いてくる。ある意味、たった1回のミスさえも許されないようなレベルにまで到達しています。シュート技術もすごく高くなってきていますよね。ヨーロッパのビッグクラブの多くが女子チームを所有し始めたことで、ヨーロッパ勢はここ数年で何歩も先を進んでいる印象を受けています。