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なぜ少女漫画で“青春×パラ”? 『ブレードガール』作者に聞く「何かを失った悲しみと何かを得た歓びがある」
text by
松尾奈々絵(マンガナイト)Nanae Matsuo
photograph by重松成美/講談社
posted2021/08/31 11:01
義足の女子高生ランナーの挑戦を描く『ブレードガール 片脚のランナー』は海外でも注目された“青春パラスポーツ漫画”である
「私もそうでしたが、義足ユーザーでも、競技用義足(ブレード)を知らない方も多いのです。例えば義足の体験会も東京や大阪といった都心中心で開かれていて、田舎ではまだまだ数が少なかったりする。福祉や医療の方面で情報を収集しているとなかなかヒットしないのかもしれません。『自分が走るなんて……』と思い込んでしまっている人も多いと聞きました。だからこそ少しでもそんな人に『走れるんだ』と気づいてもらいたい」
金銭面の問題も付きまとう。日常で使う義足と違い、スポーツで利用するブレードには、何十万、良いものでは100万円以上もかかるものもある。何より嗜好品扱いになってしまうため、国からの助成金も期待できないのだ。それでも、「もっとパラスポーツへの認知が広がれば、競技人口も増えて、選択肢の一つとして当たり前になるかもしれない」と重松氏が続ける。
「障害はかつて福祉の面でよく扱われて、大変な障害を持っている人たちが“頑張っている”という文脈での紹介が多かったように思います。でもパラスポーツとは、1つの独立したジャンルとして、『何に苦しんでいるのかではなく、どう楽しんでいるのか、どう限界を突破していくのか』を見せてくれるショーだと思うんです。その魅力に気づけば、応援せずにはいられないと思いますよ」
「多様性やテクノロジーの可能性を常に教えてくれる存在」
漫画家人生で最も影響を受けた漫画は意外にも『攻殻機動隊』。もちろん『ブレードガール』もその影響を受けている。海外の漫画研究者たちとのトークセッションでもそう話していた重松氏に、その理由を最後に聞いた。
「人体とテクノロジーが融合して、今までにないパフォーマンスや世界を見せてくれる物語が好きなんです。そういう意味で、パラスポーツは社会のビジョンを私たちに示してくれるもの。未来の多様性や新しいテクノロジーの可能性を常に教えてくれる存在だと思っています」
ぜひ『ブレードガール』からパラスポーツの魅力でもある“未来の多様性と可能性”を感じてみてほしい。
(【漫画】『ブレードガール 片脚のランナー』第1話 を読む)
(【漫画】『ブレードガール 片脚のランナー』第2話 を読む)
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