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稲垣吾郎×草なぎ剛×香取慎吾「東京パラリンピックのここを見る!」パラスポーツをサポートする動機と注目アスリートは?
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/08/24 17:05
東京パラリンピック開幕を前に見どころを語り合った3人。連載を通して多くのパラアスリートたちを取材してきた
パラスポーツのにわかファンにとって理解が難しいことのひとつが、障がいの程度に応じて細分化したクラスだ。競技がより公平であるためのルールだが、分かりづらいという声もある。連載でも話題になることが多かったが、3人の考えはどうか。
香取 クラス分け、最初は難しく感じていた。でも、今は逆にそれを理解することが面白いと思ってます。だって腹筋が使える選手と使えない選手が同じ土俵で闘うのはフェアじゃないし、視覚障がい者向けのルールがないと安全に試合ができない。
草なぎ そういう意味では、各選手の障がいを理解することが始めの一歩かもね。
稲垣 競技用車いすに乗せてもらったとき、そのきつさに驚いたんだよね。正座の状態で車いすに乗って、両手でホイールを回してみたけど、正座をして力を出すなんて日常生活ではあり得ないことだから「選手はこんなきついことをしてるのか」って。だからこそ、障がいの部位や程度によってクラスだけじゃなく、それを補うために使う道具も少しずつ違っているよね。
香取 車いすバスケにしても、単純に車いすに乗ると立っている状態より低い位置に頭がくる。だから、普通に投げてもゴールにはまったくボールが届かない。そういうことにいちいち衝撃を受けてきたよね。
稲垣 選手たちに会って、実際に障がいを抱えてプレーすることの難しさや車いすで体を動かすことの大変さを体験したからこそ、公平さを保つためのクラス分けの必要性がわかってきたところもある。
香取 でもさ、もしクラス分けも難しいと感じたら、思い切ってクラスを気にせず見るのもアリだと思う。そこでつまずくよりも、まずは新しいスポーツを楽しむ! そして見ながら理解する、でいいと思います。
草なぎ オリンピックでもスケートボードやサーフィン、BMXとか、新しい競技が注目を集めたよね。パラスポーツもそれに近い感覚で見てもいいのかもしれない。
稲垣 色々な発見をしながらパラリンピックを見る、ってことだよね。
草なぎ 競泳の木村敬一さんと話した時、彼は生まれつきの視覚障害で目が見えなくて、コースロープに手をぶつけながら泳いでいた。しかもコースロープって硬いから、手の甲や指に無数の傷跡が残っている。でもそれは「かわいそう」とかじゃなくて、努力の跡として見ていいって気づかされた。努力して、やっとのことで手に入れた、あれが彼のベストな泳ぎ方なんだから。
香取 パラアスリートを見るときに、ヘンな同情はいらないんだよね。平昌パラリンピックを現地で見たとき、アイスホッケー場で転んだ義足の選手に会場から「何やってんだ」ってヤジが飛んだの。最初は驚いたけど、それが徐々になじんできた。ああそうか、ここは鍛練を積んだアスリートが真剣勝負を繰り広げる場所なんだって。あの腑に落ちた感覚は、今でもよく憶えてる。