3人の話題は、連載の中で飛び出した印象的な言葉へ移っていった。稲垣さんがホストを務めた回で、走り高跳びの鈴木徹選手が発していたこんな主旨の言葉だ。

《僕たちは障がい者だけど、アスリートになれるくらいだから恵まれているほう。だからパラリンピックを見て、障がい者全員がこんな風にポジティブになれる、またはなるべきだ、と思い込まないでほしい》

　パラアスリートと交流を続けてきた彼らは、この言葉をどう受け取ったのか。

稲垣　心に響く意見だよね。アスリートとして華々しく活躍する選手がいる一方、ベッドで寝たきりの人もいるんだろうし、確かにひとくくりで考えちゃいけないなって。

草なぎ　難しい話だね……。でも、すごくシンプルに考えると、人間誰しも異なる個性を持っていて、考え方も違えば体も違う。やっぱり、それぞれの人に寄り添おうという気持ちが大切なんじゃないかな。どうすれば役に立てるのか、何をすれば良いサポートなのか、それを僕たちはこの先もずっと考え続けていかなくちゃいけないと思う。

香取　今、多様性とかマイノリティとか、色んな新しい価値観がぶわーっと押し寄せて来ていて、何が正しいのかわからなくなってしまわない？　だからパラリンピックについても、障がいについても今すぐでなくても良くて、一歩ずつ、少しずつ理解していくっていうのが良いんじゃないかな。

草なぎ　そうだね。僕らも最初は車いすの方とどう接すれば良いのか全然わからなかった。でも、そこで一歩下がらずに近づいていったら壁がなくなっていったんだよね。

稲垣　これは連載の中でも話したけど、車いすラグビーの日本選手権を観戦したとき、僕の近くで車いすに乗った小さな女の子が目をキラキラさせて試合を見ていて、思わずこっちも嬉しくなったことがある。今度の東京大会でもテレビの向こう側でそんなシーンをたくさん見たい。それがきっかけで、競技を始める人もいるはずだから。

草なぎ　始めたくてもきっかけがないという人もいるだろうからね。

香取　選手の話だと、競技を始めた理由のほとんどが偶然の出会いなんだって。たまたま通える場所に車いすでも参加させてもらえるクラブチームがあったとか、家族が送り迎えをしてくれたから続けられたとか。

稲垣　今回の大会がパラスポーツがより広く認知されるきっかけになって、クラブチームが色んな場所にできると良いね。

草なぎ　車で2時間かかっていたところが、30分になるだけで競技人口も増えるはず。

香取　さっきの鈴木さんの言葉を聞いて、やっと僕らも「そういう考えが聞けるところまで来られたんだな」って思った。個々のアスリートにも大変な道程があって、パラリンピックの舞台にたどり着いた。その裏では知らない現実があるかもしれないけれど、パラリンピックがより良い社会の実現に向けたきっかけになるかもしれない。一気に先の先までは行けないから、少しずつ、少しずつ理解を深めていきたいです。

草なぎ　それこそが僕たちがパラスポーツをサポートする動機でもあるしね。

稲垣　精一杯、エールを送ろうよ。この連載で縁があったアスリートの方も、まだ出会えていない選手の方も、みんな頑張って下さい。3人で応援してます！

◆当連載は日本財団パラリンピックサポートセンターとの共同企画です。
【過去の記事一覧】はこちらから→『語ろう！ 2020年へ』

＜協力＞
hair&make-up by Junko Kaneda（Inagaki）/ Eisuke Arakawa（Kusanagi）/ Tatsuya Ishizaki（Katori）
styling by Yasuomi Kurita

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。