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東京五輪が“新しい五輪”だったことを示す「3つの光景」 IOCの「若い世代を引き込みたい」意図はどう着地した?
posted2021/08/09 17:10
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Kaoru Watanabe/JMPA
東京五輪開催期間中に国内外で注目を集めた光景があった。
8月4日、スケートボードの女子パーク決勝後のことだ。優勝候補の1人として注目されていた岡本碧優が最後の3本目のランに臨み、大技の「540」を決めたものの、最後のトリック「キックフリップインディー」の着地に失敗。4位で大会を終えた。
このランのあと、涙する岡本に2人の選手が駆け寄った。ブライス・ウェットスタイン(アメリカ)とポピー・オルセン(オーストラリア)だった。2人が岡本をかつぐと、他のスケートボーダーも駆け寄る。涙の岡本は思わず、笑みを浮かべた。その光景が、現場で、中継で、あるいは写真で目にした人たちから反響を呼んだ。その中心にあったのは、競い合った選手たちが試合を終えて称え合う姿への称賛であった。
この一場面にとどまらない。スケートボードの大会に行くと、スケートボーダーたちの関係性を感じることがある。競技の合い間、並んで腰をおろしてスケートボード談義をする姿を見た。2人はともに優勝候補と目される選手だった。誰かのトリックに対し歓声と拍手をおくり、失敗すれば励ますような声を飛ばす。選手間だけではない。ある選手の両親が、他の選手に「さっきのかっこよかったよ」と声をかける。そんな雰囲気の延長上に、岡本を巡る光景がある。
しばしば、スケートボードには特有のカルチャーがあると言われる。スケートボードに生きる連帯感もまた、その1つであり、その一端を示す光景に新鮮さを覚えたからこその反響だっただろう。
選手同士で登り方を相談していた?
特有のカルチャーを持ち、連帯感があるという意味では、スポーツクライミングもそうだ。試合の中のある場面が、関心を集めた。
スピード、ボルダリング、リードと競技が進む中で、ボルダリングとリードが行なわれる前、選手はコースを下見する時間「オブザベーション」がある。ホールドの位置や形状が大会ごとに異なるため設けられていて、その時間でどのように登るのかを考える。