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「日本一の準備をした」と自負した仙台育英は、なぜ県4回戦で敗れたのか? 須江監督「バッドエンドかどうかは分かりませんよ」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph bySankei Shimbun
posted2021/08/08 11:00
宮城大会の開会式で入場する仙台育英高校の選手たち。惜しくも甲子園にはたどり着けなかった
準備に不足はなかったか。須江は、この1年間、1カ月前、前々日、前日の取り組みをすべて紙に書き出してみた。それを見ても油断や隙は見当たらない。
県大会初戦から決勝戦までの先発投手のローテーションも決め、仙台商戦に照準を合わせて、そこからコンディションが上がっていくように調整していた。相手の分析も十分にだった。仙台商が右打者8人ということで、対右打者の被打率が低い伊藤樹を先発にし、状態の良い吉野蓮は三塁手として出場させてリリーフ待機。仙台商の継投を予測し、早いイニングから登板してくるサイドスロー右腕を想定した打線を組んだ。実際、その投手は5回から登板している。
しかし、試合は思い通りに進まなかった。
試合は、相手の粘り強い打撃に加え、先発した伊藤の制球が定まらなかったことで、3回に押し出し四球とタイムリーで2点を失う。5回にも併殺崩れでピンチを招き、吉野に交代。捕手も小野天之介から木村航大に代え、3点目を防ぎにいった。だが、レフト前安打の後の三塁への返球が大きく逸れてしまい3点目が相手に入った。
「バックアップ、カバーリングが甘くて失点を許したことなんて3年間で一度もなかったのに、それがこの場面で出てしまいました」と、須江は結果的には命取りとなった失点を悔やんだ。
仙台育英に足りなかったもの
それでも試合中の選手たちを頼もしく感じていた。
「こんなにも上手くいかないプレーが続いて、3点のビハインドになっても、選手たちは試合を楽しんでいた。声かけなどを聞いていても、精神論に頼るのではなく、ちゃんと分析できている。“作りたいチームができたな”とさえ思いました。だから僕からも指示していません。島貫たちが“その通りだよ”という声かけや動きをしていましたから」
チームは敗れた。8回裏に2点こそ返したものの、あと1点及ばなかった。
「絶対に負けないと思って僕らはやってきました。相手の分析もしているし、チームとしてやるべきこともやって一抹の不安もありませんでした。だから、足りなかったのは恐怖心だったんです。これを慢心と呼ぶのか、自信と呼ぶのか。結果でしかモノは語れないので、それは慢心だったということですね」