令和の野球探訪BACK NUMBER
「日本一の準備をした」と自負した仙台育英は、なぜ県4回戦で敗れたのか? 須江監督「バッドエンドかどうかは分かりませんよ」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph bySankei Shimbun
posted2021/08/08 11:00
宮城大会の開会式で入場する仙台育英高校の選手たち。惜しくも甲子園にはたどり着けなかった
大会後、3年生たちは後輩たちの指導役を務めていた。取材日の練習試合でも小まめにアドバイスを送る姿はあちこちで見かけた。夢破れた3年生にとっても、この敗戦は成長の大きな糧になると須江は信じている。
「到達しようとしていた未来とは全然違う場所に来ちゃいました。ただバッドエンドかどうかは分かりませんよ」
ニヤッと笑った。須江の目線の先には、3年生たちが後輩の居残り練習でノックを打っている。仙台育英の野球部に「引退」という言葉はない。卒業後に野球を続ける選手の進路は全員決まっており、一度帰省はするものの、新学期が始まれば次のステージに向けて練習に励む日々が始まる。
「上手くいかなかったプレーに対する改善策について、“教育”を混ぜたら言い訳になって競技者としての成長につながらない」。須江はそう考えているからこそ、仙台商戦で敗戦投手となった伊藤に「頑張ったねというのは現役引退する時に言うよ。なぜ17日に合わせろと言われて、これくらいのパフォーマンスしか出せなかったのか」と配球やコンディショニングなど“野球”の中での改善点を細かく1つずつ伝えたという。
選手の能力を数値化し、「日本一の競争」と誇れるシステムを作って成長を促した。結果を出すために最大限の努力をしてきた。だから、仙台育英に残る者たち、仙台育英から巣立つ者たちには大きな伸びしろがある。そう思える誇りや自信は、きっと慢心ではないだろう。