令和の野球探訪BACK NUMBER
「日本一の準備をした」と自負した仙台育英は、なぜ県4回戦で敗れたのか? 須江監督「バッドエンドかどうかは分かりませんよ」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph bySankei Shimbun
posted2021/08/08 11:00
宮城大会の開会式で入場する仙台育英高校の選手たち。惜しくも甲子園にはたどり着けなかった
4回戦敗退という結果を「慢心」と須江は表現した。だが、精神面だけを敗因にするつもりは一切ない。野球面から敗因を徹底的に分析する。
「足りなかったのはフィジカルとスキルです。気持ちが足りなかったとは絶対言いたくない。劣勢な展開で正確に安打を打ったり、守ったりするスキルが足りませんでした。そして仙台商さんは“当たって砕けろ”な野球ではなく、深めに守ったり、どちらかに寄ったりするシフトを敷くなどしっかりと対策をしてきて凄くリスペクトしています。その中でそれを打破するフィジカルが僕らにはありませんでした。もう1つ、打球の速さだとか押し込める力が必要でした」
監督としての反省も大きい。
「僕がもっとゲームコントロールをすべきでした。選手たちを信用していたつもりが信頼してしまった。頼ってしまった。輪の中に入って“分かっているとは思うけど、この展開をどう見てる?”、“やっぱりそうだよね”、“こういう見方もあるよ”、と言ってあげれば良かったんです」
試合前日には必ず伝えている「明日負けて最後になってもいいように心を整理をしてから戦おう」「負けてもグッドルーザーになろう」という話も、今回の試合前には母の通院の付き添いがあってしなかった。だが「僕が言わなくても島貫が同じ話をしているんです」。
須江が言う通り、このチームは成熟していた。
それでも負けた。あらためて勝負の厳しさを痛感する試合だった。
だからこそ、須江はポジティブな言葉を並べる。
「この話の結論から言うと、僕らはきっと強くなります。『絶対』なんてことはないんだと身をもって知ることができましたから。今、1、2年生が取り組んでいることは、最後の夏前のように研ぎ澄まされ、“こうやって戦おう”というのが明確になっています」