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中国は伊藤美誠を“徹底的に警戒し、研究してきた” 日本の20歳が登れば登るほど高くなった“卓球界最強国の壁”
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2021/07/30 17:07
卓球女子シングルスの3位決定戦で勝利し、銅メダルを手にした伊藤美誠。シングルスでの打倒中国はならなかったが大会はまだ続く
「準決勝も3位決定戦もいい準備ができていなかった」
中国勢とあたったのは3位決定戦の前、同日行なわれた準決勝。相手は孫穎莎、同世代として長年しのぎを削り、競り合ってきた相手だ。
しかし0−4と完敗を喫した。第2ゲームで9−3と大きくリードしながら連続で8点を奪われたのが大きかった。
打倒中国はならなかった。
悔しさは中国勢に敗れたことだけではなかった。
「今日の準決勝もそうですし、3位決定戦もですけど、そこまでうまくいっていない状態で負けたのと勝ったのと、という感じ。やっぱり、負けるにしてもすべて出し切りたいじゃないですか。準決勝も3位決定戦もいい準備ができていなかったです」
勝敗とは別に、内容を悔いた。力を出し切れなかったのを悔いていた。
孫らとの合同練習も実現させ、備えてきたが
勝った3位決定戦にも伊藤は納得がいかなかったが、何よりも、準決勝の孫との試合で、練習で培ったことが出せなかった。出せなかったは語弊がある。出させてもらえなかった。緩急を交え、伊藤のリズムを崩し、ミスを誘った。伊藤も対策をとってきたが、孫のプレーに迷いが生じたか。いずれにせよ、孫の対策が上回っていた。
昨年11月には中国遠征し、そのとき孫や孫を決勝で破り優勝した陳夢(中国)らとの合同練習が実現した。相手に研究されるリスクはあったが、相手を知ることの意義を考えてのことだった。ボールの質の高さなどをあらためて感じ、オリンピックに備えてきた。
でも相手はそれ以上だった。伊藤を徹底的に警戒し、研究してきた。
「『できない』をなくして、『できる』状態に持っていきたいんです。けれどそれができませんでした」