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中国は伊藤美誠を“徹底的に警戒し、研究してきた” 日本の20歳が登れば登るほど高くなった“卓球界最強国の壁”
posted2021/07/30 17:07
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
記念すべきメダル、でもそれとはほど遠い表情があった。
7月29日、卓球女子シングルス3位決定戦でユ・モンユ(シンガポール)に4−1で勝利し、伊藤美誠は銅メダルを獲得した。
日本女子シングルス史上初のメダルである。2012年ロンドン五輪では石川佳純が、2016年リオデジャネイロ五輪は福原愛が3位決定戦に臨み、でもメダルには手が届かなかった。その壁をついに破った瞬間だった。
だが試合を終えた後の伊藤にあったのは喜びではなかった。かすかに笑みを浮かべることはあっても、満ちていたのは悔しさばかりだった。
「(100のうち)99は悔しいです。100に近いくらい」
涙を浮かべていることを尋ねられると、きっぱり答えた。
「悔し涙です」
女子シングルスのすべてで優勝してきた中国
悔しさには、2つの理由があった。
今大会、伊藤は「3つの金メダル」を目標に掲げた。混合ダブルス、シングルス、団体と、出場するすべてでの優勝を目標にしていた。そのためには果たさなければならないことがあった。「打倒中国」である。オリンピックの種目に採用後、中国は女子シングルスのすべてで優勝し、銀メダルを逃したのもわずか2大会のみ。団体戦ではあらゆる試合を3−0と完璧に勝利し、もちろん全大会で金メダルを誇ってきた。
日本卓球界が悲願としてきた中国を倒すという目標は、伊藤にも強く刻まれていた。
先日の混合ダブルスは水谷隼と出場し、中国を決勝で破り優勝。まず1冠目を獲り、迎えたのがシングルスであった。