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“キング”内村航平がまさかの落下でも“誰も動じなかった”理由とは? 団体銀メダル獲得の裏で語った「彼らが超えていかなければ」
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![矢内由美子](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/b/8/90/img_b82db18f8019ada2a276cfa1e1d92edb6985.jpg)
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byJMPA
posted2021/07/28 11:07
![“キング”内村航平がまさかの落下でも“誰も動じなかった”理由とは? 団体銀メダル獲得の裏で語った「彼らが超えていかなければ」<Number Web> photograph by JMPA](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/0/f/700/img_0f604421f2ddbdebd238943e126ad186343983.jpg)
7月24日、一本に絞って臨んだ鉄棒の予選。しかし無情にもバーは手からするりと抜けていった
戦いを終えると、4人の若き選手たちを頼もしそうに見つめる水鳥寿思男子強化本部長の姿があった。
「予選で内村が鉄棒で落下した後に、内村でも失敗が出てしまうのだと、4人が構えてしまうのではないかと気になった。でも彼らは気にせず自分の演技をして、もうそこを超越したと感じた」
一方で、内村の支えがあったことには心から感謝した。
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「僕の中では彼に助けられた。合宿でも僕以上に選手に声をかけてくれたし、彼の取り組みや技のイメージはものすごく参考になったと思う。そもそも北園が内村を目標にしてここまでやってきた。内村は本当に大きな存在だった」
「航平さんに頼り切りたくはなかった」
表彰式を終え、銀メダルを首から下げた日本の4人はしみじみと言った。
谷川は「19年はまだ航平さんに頼っちゃっていた。僕らがひっぱらないといけないと思っていたけど、引っ張りきれていなかった。でも今のこのチームは、僕と和磨が少しは経験を伝えて雰囲気作りをできたのではないかと思う」と胸を張る。
萱は「航平さんにはキャプテンとしていろいろ教えてもらった。『和磨は大丈夫だよ』と言ってくれることで、じゃあ大丈夫なのかなと、動ずることなくできたと思う。でもどこかで頼り切りたくないよという思いがあった。僕たち4人がしっかりしなくてはいけないというのがあって、その両方が良い具合にあった」と振り返った。
北園は「僕は航平さんを見てあこがれて体操を始めた。そうやって僕たちを見て体操を始めるきっかけになると良いと思う」と力強く言った。
内村が決勝の会場に来なかった“理由”
この後、28日の男子個人総合に予選1位の立場で出場する橋本は、自らを発奮させるように言葉を選んだ。
「内村さんがいないとか、誰がいないとかではなく、毎年メンバーは替わる。誰が出てもおかしくないし、オリンピックが毎回同じメンバーでも面白くない。4年後は熾烈な代表選考が待っているのでワクワクしかない」
水鳥本部長によると、内村は「テレビで見ます」と言い、団体総合決勝の会場には来なかったという。4人のメンバーたちこそ主役だからという潔さと、後輩たちには伸び伸びとやってほしいという思いやりがじんわりと感じられた。
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