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桐生祥秀の覚悟とニッポン4継の絆
posted2021/07/31 07:03
text by
宝田将志Shoji Takarada
photograph by
AFLO
男子4×100mリレー=4継の肝はチームワークにあり。今大会、リレーにすべてを懸ける桐生はそれを最も知る男だろう。悲願の金メダルに挑む日本短距離界のアイコンの決意に迫る。
それは2年前。事の発端は、桐生祥秀が欧州遠征に出発する際の空港取材だった。ドーハで2019年秋に開催される世界選手権の代表には、リレー経験豊富な飯塚翔太や山縣亮太が入っておらず、報道陣は、誰がリーダー役を担うのかに関心を寄せていた。
代表入りが有力視されていた桐生は質問を受け、こう答えた。
「誰が引っ張るんですかね? 僕は引っ張るつもりはない。4人とも自由でもやることは決まっているので。バシッと決まらなくていい」
いつものテンポの良い口調を聞きながら、私は「それでいいのだろう」と感じていた。
リレーはチーム競技ではあるが、団体球技などとは違う。バトンを持って走っている時は誰も手助けできないし、特に代表のリレーはメンバーの普段の練習拠点もバラバラだ。自分の仕事をきっちりこなして、次の走者へとつなぐ。各自が走りの精度を高めることがチームの力になると考えていたからだ。
何の気なしに桐生の話した内容を、そのままツイッターの私の個人アカウントでつぶやくと、2日後、その投稿を引用して桐生がコメントをかぶせてきた。「引っ張るつもりはない。というか みんな1つの目標に向かっていくから 誰かがそっせんしてまとめなくてもチームはまとまるという意味で言ったのに」(原文ママ)と。