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大谷翔平とホワイ・ノット?の精神。メジャーの一流選手たちが「勇敢な冒険」にお世辞ではない好意と敬意を示すワケ 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2021/07/17 11:04

大谷翔平とホワイ・ノット?の精神。メジャーの一流選手たちが「勇敢な冒険」にお世辞ではない好意と敬意を示すワケ<Number Web> photograph by Getty Images

オールスターゲームの1回表、両リーグの目下の本塁打王、大谷とタティスJr.が投手と打者として対戦した

 マーカス・シーミエン(ブルージェイズの内野手)は「変化球が投げられなくて投手をあきらめた」と告白する。ウッドラフ(ブルワーズの投手)は「95マイルの速球を見た瞬間、打者は無理だと思った」という。《95マイル以上の速球に対する大谷の長打率は.778に達する》とアプスティーンは指摘している。《J・T・リアルムート(フィリーズの捕手)は高校時代にはクローザーだったが、二刀流をつづけることなど考えもしなかったという。だが、もし彼がいま十代だったら、別の考えを抱くはずだ》という記述も出てくる。

 ニューヨーク・タイムズの電子版に掲載されたタイラー・ケプナーの記事も面白かった。ケプナーは、ゲリット・コール(ヤンキースの投手)に取材し、《大谷が示したのは、ホワイ・ノット?(やってみればいいじゃないか)の精神だ。最初から無理と決めつけたり、リスクヘッジばかりを考えたりするべきではない》という発言を引き出している。

お世辞ではない好意と敬意

 これは、大谷がやってのけてきたことの深部を照らす発言だ。大谷は、虻蜂取らずになるリスクを恐れず、前に進んだ。トミー・ジョン手術を受けたあと、球速が落ち、制球がまったく定まらなくなった彼を見て、二刀流の壁や選手生命の危機を感じた人は少なからずいたと思う。大谷自身の表情も、ときおり曇って見えたことがあった。

 ただ彼は、弱気の虫に屈せず、夢見る権利を放棄しなかった。勇敢な冒険だ。食生活を改善し、下半身を強化し、メンタルタフネスを鍛錬し、打撃術と投球術を高め、にこにこ笑いながら危機を乗り切ってきた。

 これから先、どんな困難が待ち受けているかはわからないが、少なくとも今季、彼が大きな一歩を踏み出したことはまぎれもない事実だ。

 他の選手(それも一流の選手)たちは、そのむずかしさや苛酷さを、身体で痛感している。だからこそ彼らは、お世辞ではない好意と敬意を大谷に示す。

 第1打席の大谷と対戦したマックス・シャーザー(ナショナルズの投手)は、「俺は今季30打数ノーヒットなのに、あいつは30本以上もホームランを打っている」と笑ったそうだ。昨年、ナ・リーグのMVPに輝いたフレディ・フリーマン(ブレーヴスの内野手)は「もしゲレロ(ブルージェイズの内野手ブラディミール・ゲレロJr.)が三冠王を取ったとしても、今季のア・リーグMVPは大谷だ」と断言している。

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