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「エースは黒後」中田久美監督も期待する黒後愛の“爆発” 恩師が明かす、まだ発揮しきれていない“稀有な才能”とは?
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byFIVB
posted2021/07/05 17:00
ネーションズリーグで確かな手応えを得た黒後愛。中田監督がエースに指名するなど、東京五輪でも活躍が期待される
中田監督の代表発表から2日後の7月2日、前髪をチョコンと結んだ姿でオンライン取材に応じた黒後の表情は明るかった。聞けば、ネーションズリーグ終盤のドミニカ共和国との一戦でスパイクの感覚を取り戻したのだと言う。
「それまでは助走と打つまでがマッチしていなくて、ボールと身体が別。連動していないまま打っているイメージで、なかなかしっかりボールを叩けていない感覚があったんです。でも(ドミニカ共和国戦で)ボールを叩く位置、全身を使って打てる感覚が戻って来た。自分の中でも、あ、こういう感じかな、ってハマった感覚がありました」
その背景にはセッターの籾井と重ねたコミュニケーションがある。「トスは高く、ネットから離す」「常に全力で助走に入る」と互いが“約束”として繰り返したことで、バックライトから対角線上の奥に叩きつけ、高さで勝るブロックも当てて弾き飛ばすスパイクが見られるようになった。
「これでもか、というほど、本番までに愛さんとコンビ練習を重ねていきたい」と話す籾井のコミュニケーション力、そして両者の“高さ”という武器が噛み合って、これだよこれ、と至るところから声が聞こえてきそうな黒後本来のスパイクが蘇ってきた。
ようやく見えた一筋の光明。
間もなく立つ、初の大舞台で黒後はどんなプレー、表情を見せるだろうか。次々変わる状況に、少なからぬプレッシャーを背負い、味わうのはもしかしたら楽しさよりも苦しさのほうが大きいかもしれない。
ならば、願うのはひとつ。
気負いも我慢もせず、すべて爆発させればいい。欲しいトスを求め、大きなフォームでスパイクを浴びせ、世界のブロックを打ち破る。その姿こそ、「エース」であることの証になるはずだ。
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