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カープ栗林良吏、コーチが証言する「1年目っぽくない」徹底ぶり…登板10分のために“11時間以上前に球場入り” 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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posted2021/06/29 11:03

カープ栗林良吏、コーチが証言する「1年目っぽくない」徹底ぶり…登板10分のために“11時間以上前に球場入り”<Number Web> photograph by KYODO

広島が苦戦しているなか、絶対的守護神としてチームを牽引する栗林良吏(24)

 栗林と同じように入団1年目から抑えを任され、背番号20の前任者である永川勝浩投手コーチは言う。

「抑えにとっては、気持ちをつくることが一番大事だと思う。正直、気持ちが入れば、自然と肩もできるからね。栗林はブルペンで見ていても、気持ちが入った瞬間が分かる。体を動かして、投球練習に入るくらいかな。それまでの表情とはまったく違う。本当に徹底してやっている。1日1日、やるべきことが1つ1つしっかり決まっているから、同じテンションで行けるんだと思う」

 コンディションや調子は、その日によって異なる。だが、それらに左右されずに毎日同じルーティンワークを行うことでわずかな変化にも気付くことができる。気付くことで、修正できる。修正することで、不安なくマウンドに上がることができるのだ。開幕から安定して高いパフォーマンスを発揮できているのは、徹底された“準備力”があってこそだ。

コーチも「1年目からできることじゃない」

 登板へ向けた準備とともに、座右の銘とする「謙虚」さもまた、変わらない。

 凛々しいマウンドでの立ち居振る舞いとは違い、普段は礼儀正しい好青年の印象が強い。グラウンドでは先輩だけでなく、後輩からも何か学ぼうとする姿勢を永川投手コーチはよく目にするという。

「いい意味で、1年目っぽくない。普通の新人投手だと、1年目はまず自分が今までやってきたことが通用するかどうか。ただ自分の力を発揮しようとすることしかできないと思う。もし通用したら通用したで、若いがゆえに勘違いも出てくる。でも、栗林は周りの話を聞くし、あれだけ結果を残しても調子に乗るようなことが一切ない。1年目からできることじゃない」

 何か新しい感覚を得ようとする探究心であり、自分で気付かぬ変化を気づきに変える客観視でもあるのかもしれない。

 自分が抑えてもリードしてくれた捕手や守ってくれた野手への感謝を口にする。記録を更新していたときも「次の試合は初登板の気持ちでまた頑張りたい」と、常に目の前の登板を新たな一歩と捉えていた。謙虚だから、傲慢になることなどない。怠慢も生まれないから、相手に隙も与えない。さらに学ぼうとする姿勢が、成長を促す。

 “準備力”に加え、“謙虚力”が広島の若き守護神の躍進を支えている。

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