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大谷翔平のホームラン量産、これまでと何が違う? 数字から浮かぶ「2つの超才能」+イチロー並みのバントヒット率
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byUSA TODAY Sports/REUTERS/AFLO
posted2021/06/21 17:01
3戦連発で両リーグトップタイの23号本塁打。大谷翔平の打棒は全米でも注目の的だ
大谷の打球で一番爽快なのは右中間スタンドのはるか上段に落ちるホームランだが、今季はこうした一発が急増しているのだ。
現地インタビュアーが「ウチュウカン? サチュウカン?」
この変化にはアメリカのメディアも興味を抱いたようで先日はインタビュアーがたどたどしい日本語で「ウチュウカン? サチュウカン?」と聞いていた。大谷は「いつもセンター方向に大きな打球を打つことを意識している」と言った。偽らざるところだろう。
端的に言えば、大谷自身は右中間を特に意識しているわけではないが、その方向の飛距離が前年までより伸びているのではないか。アッパースイングとの関係もあるだろう。
もともと大谷は、内角の速球に右ひじをたたんで反応することができる器用さを持っていた。今季はそうして打った打球がホームランになる確率が高まっているのではないか。
「バレルゾーン」率も打球速度もスゴい
MLBの公式サイトの記録欄は、「STATSCAST」というサイトにリンクしている。
このサイトにはBrls/BBEという項目がある。バットに当たってインプレーになった打球(BBE)のうち、何%が本塁打になるための理想の角度(Brls=バレルゾーン)だったかという比率だ。
<ア・ナ両リーグ打者のBrls/BBEのベスト5 ※6月19日時点>
1.大谷翔平(エンゼルス) 24.2% 39/161
2.タティスJr.(パドレス)20.9% 29/139
3.アクーニャJr.(ブレーブス)19.2% 33/172
4.ジャッジ(ヤンキース)18.6% 31/167
5.デバース(レッドソックス)17.9% 33/184
<バットに打球が当たった瞬間の速度である打球初速(Exit Velocity)の最高値のベスト5> ※単位はマイル(MPH)
1.大谷翔平(エンゼルス)119.0(191.5km/h)
1.ジャッジ(ヤンキース)119.0(191.5km/h)
3.ゲレーロJr.(ブルージェイズ)117.4(188.9km/h)
4. アクーニャJr.(ブレーブス)117.2(188.6km/h)
5.メルセデス(ホワイトソックス)116.8(188.0km/h)
大谷は「フライボール革命」の「核心」とも言うべきバレルゾーンで打球をとらえる技術が、MLBの打者の中で最も優れている。そしてバットスピードもMLBでトップなのだ。
「ホームランを打つ技術」でも「パワー」でも、大谷翔平はMLBでも飛びぬけた存在だと言える。
最後にもう1つ、今季の大谷は波が少ない。