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ウッズ不在も最高潮のドキドキ感…全米オープンでも「まさか」は続く? ミケルソンのメジャー連勝、松山英樹の優勝はあるか 

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph byGetty Images

posted2021/06/17 17:02

ウッズ不在も最高潮のドキドキ感…全米オープンでも「まさか」は続く? ミケルソンのメジャー連勝、松山英樹の優勝はあるか<Number Web> photograph by Getty Images

トーリーパインズで行われる今年の全米オープン。2008年にタイガー・ウッズが壮絶な死闘を制したシーンは記憶に新しい

 全長7652ヤードと長く、フェアウエイは極端に狭く、ラフは重く深く、USGA(全米ゴルフ協会)によってモンスター級の難しさに仕上げられるトーリーパインズを勝ち抜くことは、若くても至難のワザなのだから、51歳にとっては年齢的にも体力的にも「さすがに無理」という見方が一番強く、それはそれで説得力はある。

「悲願の全米オープン制覇はなるか?」「生涯グランドスラムはなるか?」といった外野の声をシャットアウトするために、「携帯もSNSもすべて封印する」とすでに語ったミケルソンの非日常を作り出している姿勢が「平常心を失っている証だ」という指摘も、「なるほど」と頷ける。

 しかし、先月の全米プロ制覇だって、開幕前にミケルソンの勝利を予想していた人は決して多くは無かった。それどころか2013年全英オープン制覇以来、メジャー優勝から8年も遠ざかっていたミケルソンが、まさかシニア入りしてからメジャーを制するなどとは誰も予想していなかった。多くの人々が「それはない」と思っていた予想が覆る「まさか」が起こることはある。それを実証したばかりのミケルソンだからこそ、もう一度「まさか」を起こす可能性は「ないことはない」。

 平常心が失われているのかどうかは、外野はもちろん、ミケルソン自身にもわからないことであり、現段階で平常心の有無を問うのは、おそらくは愚問なのだろう。

ミケルソンは欲張らない

 注目すべきは、世の中で言われる「地元」の強みが、もはやミケルソンには「ない」かもしれないという点だ。サンディエゴで生まれ育ったミケルソンにとって、トーリーパインズは確かに「近所のムニシパル(公営)」であり、慣れ親しんできたコースではある。

 この地で開催される米ツアーのファーマーズ・インシュアランス・オープンでも過去3勝を挙げている。しかし、その3勝目は20年も昔の2001年のこと。しかも、その直後にトーリーパインズでは大改修が行なわれ、ミケルソンが得意としてきたグリーン周りの形状は大きく変更された。

 そういう意味では、大改修後の近年のトーリーパインズで腕を磨いてきたサンディエゴ出身のザンダー・シャウフェレなどのほうが、ミケルソンより格段に大きな「地元」の強みを持っており、ミケルソンには、ここでもアドバンテージがさほどない。

 しかし、百戦錬磨のミケルソンのすごさは、そこを逆手に取って、絶対に無理に攻めないぞと固く心に誓っているところだ。

「グリーンは難解すぎるほど難しい。10~12メートルのロングパットをカップに寄せる方法をなんとか見つけることができれば、狭くて危険な場所にあるピンを無理に狙っていく必要は無い。ロングパットを寄せることができると思えれば、実際にそうできれば、(短いパーパットを)入れて、ひたすらパーを獲る。もしも、長いパットがいくつかだけでも入ってくれれば、もうそれでいい」

 無理に狙わない。バーディーを求めない。欲張らない。気負わない。

 そういう「ない」をしっかり胸に抱いて臨もうとしているミケルソンには、これまでのどの全米オープンのときよりも、心の余裕が感じられる。

 その余裕が全米プロを史上最年長で制した自信から生まれているのだとしたら、その自信、その余裕を備えている今回こそ、ミケルソンの悲願が叶う可能性は大だ。

【次ページ】 では、優勝候補の筆頭は?

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