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菊池雄星の成長を感じるポイントは「軸足」MLBデビュー戦のダルビッシュを思い出した“修正する勇気”とは?
posted2021/06/03 17:03
text by
木崎英夫Hideo Kizaki
photograph by
Getty Images
手が先か、足が先か
「人の意識は体のどこかにかすかな変化となって現れる」
昨年他界した野村克也氏が遺した至言の1つである。ボールを見逃す際の体重移動やファウルの仕方からも打者の考えを読み取れると同氏が説けば、今日まで最後の4割打者としてメジャー史に刻まれる故テッド・ウイリアムズは、打者目線から「投手が投げる球はすでにモーションを起こす前に決まっている。必ずどこかに癖が出る」の言葉を遺している。
さて、冒頭の「手か足か」である。
5月30日(日本時間31日)、本拠地でのレンジャーズ戦で7回途中3安打2失点5奪三振の好投で3勝目を挙げたマリナーズの菊池雄星は、クオリティ・スタート(QS=6回以上、自責3以下)をメジャー自己最長の6試合連続へと伸ばす安定した内容で5月を締めくくった。
この間で、最も印象深い登板を問うと、菊池は迷うことなく3敗目を喫した17日のタイガース戦を挙げた。
一塁側に寄っていた軸足のズレ
「去年は間違いなくできなかったこと」
菊池がこう振り返った登板では、今季の軸にするカットボールの精度が上がらず、ソロと2ランを浴び、2回(3失点)までに費やした球数は50球。頭が突っ込み、明らかにフォームはバランスを欠いていた。
「テイクバックがちょっと後ろに入って、(体が)横振りになるような形になっていました。その原因が、2、3カ所に絞られてきたのは今年のいいところ。で、今日はテイクバックで直しました」
以後、立ち直り、3回から降板する6回まで無失点で切り抜けた。自分の投球メカニクスを客観視できているのが今年の菊池である。ただ、あの日は、足元への意識は薄らいでいた。本拠地T-モバイル・パークのマウンドに立った菊池の左足は、わずかに一塁側へと寄っていた。いつもはプレートのほぼ中央に置く軸足のズレは、何を意味していたのか。
「(体の)横振りと(足のズレの)どっちが先かは分からないですけど。横降りになると、どんどんそっち側にそっち側に流れてしまいやすいので。なるべく真ん中でと思っているんですが……。試合になると、どうしても忘れてしまうところでもありますね」
釈然としない答えではあったが、菊池は察したかのようにこう続けた。