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菊池雄星の成長を感じるポイントは「軸足」MLBデビュー戦のダルビッシュを思い出した“修正する勇気”とは?
text by
木崎英夫Hideo Kizaki
photograph byGetty Images
posted2021/06/03 17:03
日本時間31日のレンジャース戦で今季3勝目を挙げた菊池雄星。安定した内容で5月を締めくくった
「勝ちたい、ゼロに抑えたいという気持ちがいつも以上に強かったんだと思います。徐々に、無意識に一塁側に寄りつつあったのかな。多分、4回ぐらいからは、それに気付いて真ん中寄りを踏むようにしました。そしたら軌道も変わってきました。もっと早く気付ければよかったと思っています」
技術的なことも絡んでいた。2年ぶりの対戦で右打者を9人並べた相手に有効になるのは、内角へのカッター。より角度を出したいという気持ちが、左足をプレートの一塁側へと誘っていったのである。
ただでさえ、曲げようとする意識が強すぎると体が開いてしまう難点があるカットボールである。軸足がいつもの位置に据えられていなければ、岩隈久志特任コーチが推奨する、背筋が真っ直ぐに伸びた片足の挙上位を正しく保つのは難しくなる。
つま先分から始まったズレ――。それは、端なくも“気負い”を照らし出していた。
足元への目が、ここで後ろ向きになった。
ダルビッシュの勇気ある“修正”
9年前の4月、プレートを踏む足の位置を模索しながら緊張の一戦を乗り切ろうとしていた若き投手がいた。マリナーズのイチローに3本のヒットを打たれ降板に追い込まれた、レンジャーズのダルビッシュ有(現パドレス)である。
今や米球界屈指の右腕となったダルビッシュは、4月9日のメジャーデビュー戦でプレートの一塁側を踏んで臨んでいたが、途中から真ん中に置いた。アーリントンの記者席から見た勇気ある右足の修正は、今も強く記憶に残る。