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グアルディオラの采配は正しかったのか? チェルシーのカンテが縦横無尽の活躍、マンC“最重要選手”は64分まで…【CL決勝分析】
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2021/05/30 17:40
カンテとギュンドガン。焦点となった中盤の2人だが、結果は「地球の3割をカバーしている」と評されたこともあるカンテの縦横無尽ぶりが上回った
チェルシーの時間帯を凌いだシティは、27分にフォデンがゴール前で絶好のチャンスを迎えるが、アントニオ・ルディガーの気迫あふれるスライディングに阻まれてしまった。
タイトな中盤の争いで、カンテが目立ち始めると、それが形勢に反映されていく。37分には、スターリングからデブライネへの横パスが少しずれたところをカンテが拾い、独走から最後はハバーツにパスを出すも、ここはジンチェンコがうまく球をさらって危険を逃れた。
しかしその5分後のチェルシーの攻撃は、鮮やかに締めくくられた。
パス回しを耐え、ハバーツが仕留める
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チェルシーの右サイド後方からの組み立てを、シティがハイプレスで奪おうとすると、チェルシーは一旦GKに戻し、そこから左へ大きく展開。チルウェルがワンタッチでフリーのメイソン・マウントにつなぐと、時間とスペースを得た生え抜きの22歳は、手薄になったシティ守備陣を切り裂く長いスルーパスを送る。右から斜めに抜け出したハバーツは、追走するジンチェンコを振り切り、飛び出してきたエデルソンをかわし、無人のゴールへ流し込んだ。
前日の記者会見で、両監督は「耐え凌ぐ」ことの重要性を強調した。大舞台での緊張も苦しい状況も、最後は当事者たちが自分で耐えなければならないもので、そうした緊張感が好結果を生むこともあるのだと。この日の前半は、チェルシーが相手のパス回しを耐え凌ぎ、大きな果実を手にした。
フェルナンジーニョ投入は64分だった
ドルトムントとの準々決勝やパリ・サンジェルマンとの準決勝も「耐えて」勝ち上がってきたと自負するグアルディオラ監督だが、ハーフタイムにも交代のカードは切らなかった。中盤では相変わらず、敵のカンテやジョルジーニョが大きな存在感を放っているというのに。
60分、負傷したデブライネの代わりはガブリエル・ジェズス。その4分後になってようやく、ベルナルド・シウバに代わってフェルナンジーニョがピッチに。安心感を得たギュンドガンやフォデンの動きがよくなり、ハバーツにこそ決定機を許したものの、終盤にセルヒオ・アグエロやリヤド・マフレズがゴールに迫った。
だが、最後までいつものシティらしい創造性は見られず、結局、追いつけないままに試合は終わった。