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グアルディオラの采配は正しかったのか? チェルシーのカンテが縦横無尽の活躍、マンC“最重要選手”は64分まで…【CL決勝分析】
posted2021/05/30 17:40
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
「勝つためにベストと思える布陣を敷いたまでだ」
チャンピオンズリーグ決勝でチェルシーに0-1で敗れたマンチェスター・シティのペップ・グアルディオラ監督は、試合後の会見で自身が選んだ先発について問われると、そう返答した。重要な一戦に彼がギャンブルのような11人を並べることは、これまでもあった。
だがクラブ史上初のCL決勝に、ひとりも守備的なMFを置かなかったことは、結果的に命取りとなった。
中盤の底はチーム得点王ギュンドガンだった
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フェルナンジーニョもロドリもいない──。先発メンバーを見て、多くの人が首を傾げたはずだ。代わりに中盤の底を任されたのは、今季のチーム得点王のイルカイ・ギュンドガン。それでも稀代の策士には、何か特別な意図があるように思えた。
「フェルナンジーニョは先発してくると思った」と敵将のトーマス・トゥヘルも振り返る。「だが、それ以外に驚きはなかった。相手は攻撃的で技術的な人選だったので、ボールを奪うのが難しく、時に5トップになる敵の前線に対応することを心がけた」
序盤から、シティは変則的な形でボールを保持する。守備時に4枚のバックラインは、攻撃時にはレフトバックのオレクサンドル・ジンチェンコが中央に上がり、ダイヤモンド型の中盤を形成。両翼のラヒーム・スターリングとリヤド・マフレズが幅をとり、偽FWとトップ下をケビン・デブライネとフィル・フォデンが交互に受け持つ。
だが最初のチャンスは、GKエデルソンのロングフィードに、スターリングが抜け出して得たもの。CLの過去5試合で先発を外れていた背番号7は、うまくコントロールできず、ゴールに繋げられなかった。
中盤でカンテが徐々に目立ち始めると……
すると、そこからチェルシーが立て続けに好機を迎える。守備のスペシャリストのいないシティの中盤を易々と抜け、10分、14分、15分と、ティモ・ベルナーがゴールに迫る。さらにはベン・チルウェルの左からのクロスに、エンゴロ・カンテがヘディングを放つも、枠外へ。
手の内を知り尽くすイングランド勢同士の対決だ。試合の趨勢は、およそ15分間隔で片方に傾き、そして戻っていく。