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福岡堅樹がトライを量産できた理由…スピードスターに勝つための「外」の習得と、勇敢で巧みな時間稼ぎ【高1福岡の衝撃】
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byTakao Fujita
posted2021/05/31 17:02
現役ラストマッチもトライなどでパナソニックの優勝に貢献。最後まで福岡堅樹は輝いていた
福岡堅樹は高速のフィニッシャーである。トライの男。しかし記憶の真ん中には速さより強さがある。最後の試合の公式シートのサイズは175cm、83kg。骨格の「小」はまったく「弱」を意味しなかった。
いざ衝突となれば当たり負けない。4年前に説明してくれた。
「当たる瞬間のところで加速すると、相手は(タックルのために)ヒットしたい(体の)ポジションからずれるので。そこでスピードを上げれば、一瞬、当たり勝つことはできます」
解剖学の講義みたいな口調だった。いや物理学だろうか。すなわち「速いということは強いということ」。そして「ものすごく速いということはものすごく強いということ」なのだ。
空中のボールの処理は理詰めで勇敢だった。理詰めなので勇敢になれるのかもしれない。こちらも4年前に話した。
「ジャンプ力で最高到達点を上げれば競り合える」
だれも反論はできず、だれも簡単にそのとおりにはできない。
タックルについてのことさらな印象はない。それは「大男のひしめく世界最高のレベルで普通にタックルをできる」証明である。利き足の左のキックはおしまいのシーズンにいっそう上達したようにも映った。
「孤立するので少しでも時間を稼ぐ」
2019年のワールドカップ。忘れがたきアイルランド戦の後半37分。7点リードのジャパンは猛攻にさらされた。フェイズは「15」へと積み上がった。
ここで福岡堅樹がインターセプトに成功する。ゴール前で背後からつかまるも、倒れたあとに相手のかすかな落球を誘い、自軍投入のスクラムをもらった。あれで白星はほぼ決まった。
2年前。ノックオン誘発の「秘話」を教えてくれた。
「タックル後に相手がボールを奪いにくるのはわかっていました。最後の抵抗というか、ボールを置いたあと、ちょっと指で引っかけました。あまり長くそうするとノットリリースを取られるので、本当に、獲られる瞬間だけ指でクッと引っかけて」
奥義の習得はいつ?
「WTBはどうしても孤立するので少しでも時間を稼ぐ技術というか、倒れてからのワンアクションはいろいろ考えてきました」