ラグビーPRESSBACK NUMBER
福岡堅樹がトライを量産できた理由…スピードスターに勝つための「外」の習得と、勇敢で巧みな時間稼ぎ【高1福岡の衝撃】
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byTakao Fujita
posted2021/05/31 17:02
現役ラストマッチもトライなどでパナソニックの優勝に貢献。最後まで福岡堅樹は輝いていた
福岡高校1年の福岡堅樹が東福岡高校とぶつかる試合を福岡で見たことがある。
2008年11月8日。福岡県春日市の春日公園球技場。花園予選の準決勝だった。
15ー38。ひたむきに前に出る防御と低いタックルの福岡高校は散った。心を動かされる青春の激突だった。
前夜。福岡高校の関係者から情報を得ていた。
「明日、福岡堅樹を見てください。1年生。速い!」
続けて、その後、何度か書いたり話したりすることとなる忘れられぬ一言。
「人間というのは脳が指令を出して筋肉を動かすでしょう。その指令があまりに速いもんやけん、ハートが置き去りにされてますもんね」
決戦当日。福岡高校の福岡はピョンピョンと跳んで瞬間に消えた。帰京後、こんなふうに描写した。
「細身ながら全身がスプリングにして剃刀のようでもあった」
忘れてはいけないリオ五輪での貢献
この5年後、1年の受験浪人をはさみながら、さっそく筑波大学2年でジャパンに選ばれる。格別な速度の「脳の指令」と「ハート」はどんどん一体と化した。
以後の実績はほとんど周知かもしれない。2度のワールドカップ。忘れてはいけない。7人制のリオデジャネイロ五輪代表としてもニュージーランドを破っている。
14ー12。終了寸前の攻防。黒いジャージィのエース格、ギリース・カカが大きく抜ける。独走か。いや、背番号11(7人制でもこの数字が背中にあった)の福岡が追いついた。
倒し、ただちに起きて、過去、なんべん目にしただろう、背を丸め、顔の位置を低くしてターンオーバーの腕を伸ばす。惜しくもペナルティーとされるも、これがニュージーランドの身上の速攻を阻んだ。
「ラグビーによい反則ナシ」の立場だが、あそこはギリギリのところを狙ってよかった。ジャパンの仲間の戻りの時間をかせげて、だから、ついに守り切り、ヒストリーは刻まれた。