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【日本ダービー】3万人で大行列ができた「府中競馬正門前駅」今年は? 駅長さんが語る「京王の駅員も競馬ファンが多いので…」 

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鼠入昌史

鼠入昌史Masashi Soiri

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posted2021/05/30 06:01

【日本ダービー】3万人で大行列ができた「府中競馬正門前駅」今年は? 駅長さんが語る「京王の駅員も競馬ファンが多いので…」<Number Web> photograph by KYODO

ワグネリアンが制した2018年の日本ダービー。この年は12万6000人以上が詰めかけた。翌年も11万人以上が集まったが2020年は無観客だった

「それに、やっぱり普段は一緒に仕事をしない駅員たちが集まって仕事をしますから、それがいい経験というか刺激になって、みんなのモチベーションにつながっていると思います。早朝からずっと忙しくて大変ですが、それでも私たちにとってもダービーは特別な日なんです」(小宮山さん)

「私は競馬場にいるほうでしたから(笑)」

 普段の競馬場線と府中競馬正門前駅はいたって静か。1日のお客さんは3000人ほどで、府中競馬正門前駅近くに暮らす人たちの通勤通学路線だ。利用者が少なく構内が広いという特徴を活かし、テレビなどのロケに使われることもある。また、社員の研修に用いられることもあるという。

 そんないつもの静かな府中競馬正門前駅は、ダービーウィークにはいると少しずつ空気が変わってゆく。もちろん駅員の体制もとくに普段とは変わらないのだが、それでも駅の雰囲気も少しずつざわついてくる。並ぶお客さんも徐々に増え、そうしてダービー当日の喧噪……。3万人近いお客さんを安全に、確実に捌くための準備を整えて、京王線もダービー当日を迎えていたのだ。小宮山さんも、入社当時から中央管区に配属された経験を持つ。ダービー当日の思い出を聞くと……。

「実は私はどちらかというと競馬場にいるほうでしたからね(笑)。駅員は朝まで働いて仕事が終わるシフトがあるんです。で、昔はよく勤務が明けたあとに先輩に連れられて競馬場に行きました。それでいろいろ教えてもらって、最終レースが終わったら府中で飲む。それが楽しみなんですよ。その頃は、ナリタブライアンとかライスシャワーとか、マチカネタンホイザとか(笑)」(小宮山さん)

「あえて府中駅から歩いてました」

 沿線に競馬場があって、勤務明けには仲間と連れだって競馬場へ。小宮山さんのように競馬ファンになってしまう人が、京王には多いのだとか。

「だから、府中競馬正門前駅で働く仲間を見るのがなんとなく気が引けるんですよね。それで、府中競馬正門前駅は使わないで府中駅から歩いて行っていました(笑)」(小宮山さん)

 そんな小宮山さんも、もちろん今では競馬場に行く機会がなくなった。無観客で開催された時期が長く続いたのだから仕方がない。

「こういう状況でも関係者のみなさんが頑張って競馬を続けてくれているじゃないですか。それを見ていると、私たちも頑張ろうと思えますよね。感染対策をしっかりして、毎日電車を走らせる。それが私たちの仕事です。一生懸命競馬を続けているのを見ているから、私たちも走らせ続けないと。だから、競馬からもちゃんと力をもらっているんです」(小宮山さん)

 2020年、無観客で行われたダービー当日は、もちろん府中競馬正門前駅は閑散としていた。そして2021年は少しだけだがお客さんがやってくる。2022年、1年後のダービーでは府中競馬正門前駅がたくさんの駅員、そしてお客さんで溢れていることを願うばかりである――。

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