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【ラグビー】クボタ初の4強の要因は? 立川理道が語った“ボルツ”の存在と一体感を作った“オレンジアーミー”「財産になりました」
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph bySportsPressJP/AFLO
posted2021/05/20 17:00
惜しくも決勝進出を逃したが、主将としてクボタの躍進を牽引した立川理道
その時間の使い方において、先発予定だった井上大介の体調不良により、今季初先発が急遽回ってきたSH谷口和洋の仕事ぶりは大きかった。
4年目の谷口は不動のレギュラーではない。クボタではノンメンバーを「ボルツ」と呼ぶが、試合2日前まで谷口はボルツだった。抜擢のキッカケはサントリーとの練習試合。後半からの途中出場だったがフラン・ルディケHCから「ボールをキープするプランの適役」として認められ、大舞台に起用された。
立川キャプテンはシーズン中、躍進の理由を問われると、真っ先にボルツの存在を挙げていた。
「日々の練習の質が上がりました。メンバー外で悔しい思いをした選手も、チームのために一生懸命に練習してくれています。選ばれなかった選手の態度、努力はこれまで以上に感じます」
質の高い練習で主力組を鍛え、試合では悔しさをこらえてスタンドから見守る。ボルツで腐らず準備をしていたからこそ、練習試合での実力発揮に繋がり、初先発を掴み取った。
「急遽メンバー入りして緊張していましたが、メンバーやボルツの選手、スタッフの方がたくさんフォローしてくれて、それが良いパフォーマンスに繋がりました」(SH谷口)
SH谷口のハイ・パフォーマンスは、出場メンバー、ボルツ、スタッフが一体となったクボタの結束力を端的に表しているようだった。
ハードワークは結実した。この試合をもって第一線を退いた戸田京介レフリーの笛が響き、23-21でフルタイム。
最後にボールをタッチに蹴り出したのは立川だった。
19年W杯で日本がアイルランドを撃破した静岡・エコパスタジアムで、立川が満面の笑みを浮かべ、拳を突き上げていた。「ハル」の愛称で親しまれる立川が歓喜する姿を、我が事のように喜んだ楕円球ファンも多かっただろう。惜しくも19年W杯の出場は逃したが、クボタで歴史を創った。テレビの中継映像には、観客席で涙を拭うボルツの姿が映った。