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欧州SL勢よりヒドい!? 給与未払い、買収は詐欺で得た金で→転売狙い、独断でクラブカラー変更…最悪オーナー愚行録
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三重野翔大Shodai Mieno
photograph byGetty Images
posted2021/04/24 17:01

マラガのアル・タニ氏にカーディフのタン氏。欧州SL構想以上にひどいオーナーがいた
前年にプレミアリーグのブラックバーン買収に失敗したインド人実業家は、1913年設立のスペインの歴史あるクラブに目を付けた。当時のラシンはプリメーラ常連クラブだったが、一度外資によって失敗している。
2003年から2004年にかけてオーナーを務めたウクライナ出身のアメリカ人ドミトリ・ピターマンは、リーグから認められていないにもかかわらず、試合中テクニカルエリア付近で選手に指示するなど、奇妙な存在として知られた。
彼を追い出した後、07-08シーズンにラ・リーガ6位でUEFAカップ出場権獲得、コパ・デル・レイでは準決勝進出を果たし、着実に名門復活の道を歩んでいた。それでもスペインの他クラブと同じように経営は苦しく、アリに買収される時点で多額の負債をかかえていた。
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「この素晴らしいクラブに対し、積極的かつ長期的にコミットすることを楽しみにしている。スペインと欧州で最高クラスの成功を収めるために、私の持つすべての知識と財力をクラブに投入する」
買収発表時の声明でこう昂然と述べたアリだったが、彼は一銭たりともクラブの為に費やすことはなかったのだ。
資金源はなんと詐欺によって賄ったもの
当初から怪しまれていた彼の資金源。それはなんと詐欺によって賄われていたものだった。ウェスタン・ガルフ・アドバイザリーという資産管理会社の創設者である彼は、世界中のビジネスマンから数億ドルを詐取したとして告発され、ビジネスの拠点を置くバーレーンとスイスでは逮捕状が出されていたのだ。
後にスペイン紙『マルカ』が報じたところによると、アリは当初からラシンを利用したビジネスを考えており、3カ月とクラブを所有するつもりはなかったという。
300万ユーロでクラブを買収した後、バーレーンの王室に1500万ユーロで売却する。つまりサッカークラブを用いた大掛かりな“転売ビジネス”を行おうとしていたというのだ。選手やスタッフのキャリアを、ファンのクラブへの愛情を踏みにじる最低の行為だ。
結局”転売”に失敗したアリは買収完了からまもなく姿をくらまし、補強費用はもちろん、選手への給与すら払おうとしなかった。
フロントでこんな混乱が続くようなら、チームの低迷は当たり前。11-12シーズンから2季連続で降格し、たった2年で3部のセグンダBへと降格した。