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欧州SL勢よりヒドい!? 給与未払い、買収は詐欺で得た金で→転売狙い、独断でクラブカラー変更…最悪オーナー愚行録
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph byGetty Images
posted2021/04/24 17:01
マラガのアル・タニ氏にカーディフのタン氏。欧州SL構想以上にひどいオーナーがいた
さまざまな憶測が飛び交う中、決定打のひとつとなったのは5月。イエロがGM職を辞任した。そしてその2カ月後には引退したファン・ニステルローイら4選手が給与未払いでクラブを告訴する。
わずか2年で売却を目論み、イスコらは移籍
マラガの混乱は終わらない。同月末にはアル・タニがアルバニアの石油企業とクラブの売却交渉を行っていることが明らかとなる。買収からわずか2年でクラブを手放そうというのだ。
これには理由がある。そもそもクラブを買収したのは地中海に面する世界有数のリゾート地であるマラガを、最新鋭のスタジアムや練習施設、ホテルや商業施設が並ぶ大規模なスポーツリゾートにする都市計画を立てていたからだ。
それが地方自治体や法律の規制、複雑な権利関係によって頓挫し、アル・タニ自身はクラブ経営への意欲をなくしたのだ。クラブを愛する地元のファンからすればなんとも身勝手で迷惑な話である。
後に交渉相手のタツィ・オイル社が買収報道を否定し売却は行われなかったものの、フロントの資金難が表面化。12-13シーズン、チームが初出場のCLでベスト8に進出する躍進をみせたが、財政的な問題があるとして翌シーズンから4年間、UEFA主催大会で1大会除外される制裁を受けた。
ここからマラガは衰退の一途をたどる。12-13シーズンをもってペジェグリーニ監督が退任し、ホアキンやイスコら主力選手が次々とクラブを去った。17-18シーズン、チームは第3節から一度も降格圏を抜け出すことなく、ラ・リーガ最下位で11年ぶりの2部行きが決定。
岡崎が選手登録できなかったのもアル・タニのせい
そして19-20シーズン前にはスペインプロリーグ機構のサラリーキャップ制に違反していることで、岡崎慎司ら新加入選手の選手登録ができないという愚行を犯した。これには地元のファンも激怒。少数株主組合は「私たちはあなたを信じない」とアル・タニを辛辣に批判した。
2020年2月、アル・タニの一族がクラブの資金を高級車や不動産の売買など私的に使用したとの告発を受け、裁判所により半年間の職務停止処分を受けている(現在まで延長)。
一時的な追放は叶ったが、この一件はまだ法廷にあり、完全にアル・タニのワンマン経営から脱却したとは言えない。それでもクラブはファンに寄り添った健全な経営を取り戻そうと、新たな一歩を踏んでいる。
マラガとほぼ同時期、ラシンも悲惨な状況に
マラガから北に752kmの湾岸都市でも、ほぼ同時期に最悪のオーナーが誕生した。2011年1月、ラシン・サンタンデールを買収したアーサン・アリ・サイドだ。