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欧州SL勢よりヒドい!? 給与未払い、買収は詐欺で得た金で→転売狙い、独断でクラブカラー変更…最悪オーナー愚行録
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph byGetty Images
posted2021/04/24 17:01
マラガのアル・タニ氏にカーディフのタン氏。欧州SL構想以上にひどいオーナーがいた
その後クラブを所有したまま逃げ続けるアリを、CEOの職から解くことができたのは2014年1月のこと。
多額の負債に加え、詐欺師により3部降格という大きな傷を負わされたラシンは現在、2018年に会長に就任したアルフレッド・ペレス氏のもと、負債の解決に向けて努力を重ねている。そして12,000人を超える株主には多くのファンが含まれており、ようやくクラブはファンのものとなったのである。
カーディフは独断でクラブカラーが……
イングランドで買収したクラブの私物化、といえば現在もカーディフのオーナーを務めるマレーシア人実業家ヴィンセント・タンを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
2010年にクラブのオーナーに就任した2年後、クラブカラーを青から赤に独断で変更し、ファンから大いに反感を買ったというのは有名な話だ。
『BBCウェールズ』の独占インタビューで変更の理由を「アジアにおいて赤は喜びの色で、祝いの色だ。そして中国文化で青は、喪に服す色だ」と、アジアマーケットを意識したものであると説明した。それまでクラブを応援してきた地元のファンを無視したも同然だ。
さらにエンブレムもカーディフを首都とするウェールズを表す「赤い竜」をメインとしたものに変更。本来のクラブのアイコン「青い鳥」は竜の下を窮屈そうに飛んでいた。
こうしてクラブの歴史やファンに対するリスペクトを欠いた結果、スタンドに「TAN OUT」のバナーが掲げられるまでそう時間はかからなかった。
反発するファンに対して強気な姿勢を保っていたタンだったが、母親に諭された結果2015年にチームカラーを青に戻している。
“生年月日に「8」が入っている選手が欲しい”
他にもGKデイビッド・マーシャルのパフォーマンスに対し「得点に貢献していない」という理由で懸念を抱いたり、「マレーシアでは縁起が良い数字だから」と生年月日に「8」が入っている選手を獲得したいと役員会で言い放ったりと、サッカークラブ経営に向いていないんじゃないか、と思わせるような言動を度々してきた。
そんなこともあって米『USA Today』で「最悪のオーナー」と紹介されたタンは心を改めたのか、チームカラーの一件以降大人しくなっている印象だ。
現在はチャンピオンシップ(2部)で戦っているカーディフ。もし今後プレミア復帰を果たしたときに、気合いの入ったオーナーが暴走しなければいいのだが……。