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【独占取材】エディー・ジョーンズ「勝敗を決める要素の20%は対人関係」ビジネスにも通ずるアプローチとは?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2021/04/23 11:02
ラグビー界だけにとどまらず、世界のトップコーチからも学びを得ていると語ったエディー・ジョーンズ。コーチングへの探究心は衰えることはない
経験だけではなく、エディーさんは世界のトップコーチとの交流にも余念がない。
ラグビーはもちろんのこと、元マンチェスター・ユナイテッドの監督、サー・アレックス・ファーガソンやペップ・グアルディオラ(現・マンチェスター・シティ監督)らと語らい、最新の知識を仕入れる。特にペップからは、練習の強度に関してかなりのヒントを得たようだ。
また、心理学的アプローチでは、
「チームには4つの『致命的恐怖』が存在する」
ことを解説し、
「プレーヤーと話すときは、開放感のある照明の明るい部屋にする」
といったビジネスの世界でも敷衍できそうな細部にまで及ぶ。
さらに、コーチングの対象である若者への好奇心も尽きない。エディーさんも61歳を迎え、年齢を重ねれば選手たちとの年齢差は広がっていく一方だが、社会学的見地をベースにアプローチを図る。
「23歳以下のジェネレーションZは、スマートフォンを操作するのにディシプリンを持っています。この世代はデジタル・ネイティブですから、依存するのではなく、使う時は使う、そうでない時には距離を置くというメリハリが自然とつけられるのです。それに対して、彼らより年長のジェネレーションXはスマホからなかなか離れることが出来ません。これはいい悪いではなく、そういう時代なのです。
NBAのゴールデンステート・ウォリアーズはハーフタイムになると、最初の5分間は選手たちがスマホをチェックするのを許しています。これも良し悪しではありません。時代に合わせたチームのマネージメントを行っているだけです」
謙虚でいることで芽生える好奇心
なぜ、これほど対人スキルを重視するかというと、コーチと選手の関係性が少なからず勝敗に影響を及ぼすことを経験則として知っているからだ。
「私の感覚では、勝敗を決める要素の80%は戦術面での準備です。しかし、残りの20%をヒューマンスキル、対人関係の要素が占めます。人間を理解しようと努めない限り、勝利は遠のくでしょうね」
エディーさんを見ていると、年齢を重ねるほどに良質な情報が集まってくるように思える。立場が上がっていけば、接する情報の質が高くなっていくのだ。
「逆説的ですが、年齢を重ねれば重ねるほど、自分が知っていることがいかに少ないかということに気づかされます。謙虚であれば、より強い好奇心が芽生え、いろいろな情報を吸収したくなってくるのです」