球道雑記BACK NUMBER

【8試合連続無失点】カープ大道温貴はなぜあんなに腕を振れるのか? 本人が明かす「栗林さん」やコーチの言葉とは 

text by

永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

PROFILE

photograph bySankei Shimbun

posted2021/04/21 17:04

【8試合連続無失点】カープ大道温貴はなぜあんなに腕を振れるのか? 本人が明かす「栗林さん」やコーチの言葉とは<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

栗林、森浦とともに勝利パターンを形成する大道。投げっぷりの良さを引き出したのは永川コーチの言葉だった

「一見、自信があるように見えると思うんですけど、マウンドでは腹を括って、後悔をしないように腕を振っているだけです。普段の自分はそんなに自信がある人間でもなくて、(部屋に帰ってから)動画を見ながら、しっかりとフォームを確認したりして、些細なことでも気にしていたりするタイプです」

 ルーキーらしからぬ佇まいは、ときに「怖いもの知らず」「度胸がある」などと称される。しかし、当の本人は、湧き上がる不安を努力で打ち消しながら、最悪のイメージを最高のイメージに変えるべく、日々葛藤しながら投げている。

 自慢のストレートを、思い切りストライクゾーンに投げ込むのだって、今の自分の立ち位置を確認する想いが強いから。いずれ連続無失点も途切れるだろうが、そこからが真の正念場だと当の本人も覚悟している。そこがプロ1年目、22歳の現在地だ。

 今年1月の新人合同自主トレでは、ルーキーで誰よりも早くブルペン入りし、春季キャンプでは前半から飛ばし気味に首脳陣にアピールした。自分の目標を最短で達成しようと考えたが故の行動だった。

 目指したのは「開幕一軍」。その先に見据える目標は、いったん頭から離して、日々の課題と向き合った。

「他とは何か違うことをやりたい」

「青森の大学を選んだこともそうなんですけど、自信があるか、ないかで答えたら自信は持っていない方だと思うんです。だからこそみんなと同じことをやっていたんじゃいけない。ドラフトも1位や2位で選ばれたわけじゃないので、そこと一緒にやっていてはいけない。(春日部共栄)高校時代もけっして能力はなかったし、八戸学院大に進んでからも最初は社会人野球に進もうと考えていたくらいです。そういった面でも他とは何か違うことをやりたいという考えが僕の中に常にあったと思います」

 ふと自分の弱さと向き合ったときに、思い出すことがある。春日部共栄高の1年生時、自分より先を進む同級生に嫉妬したことがあった。

「(当時)同学年のピッチャーで順位をつけるなら自分は2番手か3番手でした。その同級生がBチームに入る一方で、僕は入っていないことが多くて、僕が1年生のときに(春日部)共栄が甲子園に出たんですけど、そのときも彼は手伝いで行っているのに、自分は留守番メンバーに入っていた。それが悔しくて、そのときは自分のことを考えるんじゃなくて、他の人のことばかり気にしていたんです」

 自分の弱さに気が付くと、そこからはガムシャラに練習に取り組んだ。すると、今までにない感覚が自分の中についていることに気が付いた。高校1年の冬の出来事だ。

「そのときに隣を見たら誰もライバルはいなくなっていたって感じです。そのときに『孤独』になれば良いのかなって。少し掴んだ感じがありました」

【次ページ】 同期・栗林と森浦はどんな存在?

BACK 1 2 3 4 NEXT
#広島東洋カープ
#大道温貴
#栗林良吏
#森浦大輔
#永川勝浩

プロ野球の前後の記事

ページトップ