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【8試合連続無失点】カープ大道温貴はなぜあんなに腕を振れるのか? 本人が明かす「栗林さん」やコーチの言葉とは
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph bySankei Shimbun
posted2021/04/21 17:04
栗林、森浦とともに勝利パターンを形成する大道。投げっぷりの良さを引き出したのは永川コーチの言葉だった
「横山(竜士)コーチと永川コーチは『自分のタイプ(自分本来の姿)をこの1年間は見せてくれ』って言ってくれました。『まずは1年間やってみて、終ったときに反省しよう』と。フォーム的な細かい部分は全く言われないですけど、その中で2人には『お前のようなタイプは腕を振ってこそなんだから』と」
結果を恐れ、腕が振れていないときは、さすがにコーチも一言、二言、口を出す。だが、その距離感が大道にとっては心地良い。シーズンも開幕からもうすぐ1カ月が経過し、これからカードは二周り目、三周り目と進んでいく。相手球団の研究も進めば今までどおりに行かないことも出てくるだろう。それも承知の上だ。
「今はみんな初見なので、最初は様子見だと思うんです。これから対戦も二周り目に入って、二度目の顔合わせも徐々に増えて行く。(その分)怖さは感じています」
それでもやる事は変わらない。大道はこう続ける。
「結局はストレートが軸になって来るので、どれだけストレートでファール(カウント)が獲れるかだと思うんです。そこでストレートをコースに投げ切るのではなく、相手が捕えたと思ってもファールになるような強いストレートを投げて行きたいと思う。それを投げて行けば変化球を見せ球にしたり、決め球にしたり、(投球の)幅が広がると思うので。そこを大切にやって行こうかなと考えています」
今は目の前の打者、ひとりひとりを全力で抑えることだけ考える。今回の取材では、その先にある夢の話はあえて口にしなかった。
だが、大学4年の秋、大道は自身の胸のうちをこそっと打ち明けてくれたことがある。
「成功者は遠回りをして、やっとゴールに到着する。そう思っている人が多いと思います。でも、僕はそうではないと思っていて、成功する人は皆、近道をしているんじゃないかと思うんです。成功する人は『こうなりたい』と思ったら、そのために今、何をすべきか、今、何が足りていないのかを考えて、すぐに実行へ移している。その時点で僕は近道を選んでいる気がするんです」
今、こうしている間も彼は工夫を凝らし、体を鍛え、次の出番に備えている。その視線の先には、しっかりと自身の未来像が見えているのだろう。2021年のシーズンが終わったとき、大道温貴の名がどこまで響いているのか。我々の想像する上の辺りをきっと歩いているはずだ。