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“年収2000万円JALパイロット”の肩書を捨て…日本人初のNFL選手に一番近い26歳「課題は英語ですね」【アメフト】
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by本人提供
posted2021/04/17 11:00
日本人初のNFL選手に近づいている李卓(26歳)
「アメリカのカレッジでフットボールができる? 本当に? あのフィールドで――?」
だが、冷静になって考えると、自分は英語も話せない。日本ではすでに慶応大への進学も決まっている。何より、数千キロも離れたアメリカという異国で挑戦するための勇気が出なかった。
“採用倍率100倍以上” JALパイロット候補生に
それから4年の時が流れ、李は社会人として充実した日々を送っていた。
慶応大時代は3、4年時に関東リーディングラッシャーに選ばれ、2015年には学生で唯一、世界選手権の日本代表にも選ばれた。名実ともに日本学生界ではトッププレーヤーに成長。
卒業後は採用倍率100倍以上と言われる難関をクリアし、2017年4月にパイロット候補生としてJALに入社。まずは研修として成田空港に配属された。勤務の合間にはトレーニングも継続し、社会人リーグの強豪チームでもプレー。1年目の最優秀新人選手に選ばれるなど、第一線で活躍していた。
「もともと幼稚園がインターナショナルスクールだったこともあって、世界をフィールドにした仕事には興味があったんです。姉が海外の大学に行ったこともあり、空港でパイロットを見かける機会も多くて、こういう仕事に就けたらカッコいいなと思っていました」
多くの選手がそうであるように、数年アメフトを社会人でプレーして引退。その後は世界を股にかけてパイロットとして活躍する――そんな青写真も、確かに李の中にあった。
年収2000万円か、日本人初のNFL選手を目指すか
ところがそんな考えが大きく変わる出来事が起きる。
NFLが「インターナショナル・プレーヤー・パスウェー・プログラム(IPP)」の実施を発表したのだ。北米以外の国の選手でも、数カ月にわたる選考を通して実力を認められれば、NFLのチームに帯同契約を結んでくれるという。
「中学の時にアメフトを始めたきっかけがNFLのビデオを見せられて『カッコいい!』と思ったことだったんです。その時からずっと夢ではありました。大学時代に世界選手権に参加したり、アメリカにトレーニングに行ったりする中で、自分がどんどん成長している実感もありましたし、もし本当にアメリカの高いレベルでプレー出来れば……NFLに届く可能性もあると思ったんです」
翌春には本格的にパイロットとしての訓練も始まる。そうなってしまえば、NFLへのチャレンジとの両立というのは現実的に難しい。決断するなら、今しかなかった。
一方で、周知のとおり人気の職業でもあるパイロットは、平均でも2000万円近い年収を得られる安定した専門職だ。皆がうらやむ仕事を投げうってチャレンジすることへの恐怖は、もちろん無かったはずがない。
「パイロットは30歳を超えても挑戦できるかもしれない」
それでも悩む李の背中を押してくれたのは、2つの出来事だった。
1つはJALに同期で入社した仲間の言葉だった。